Institutional Real Estate, Inc.社の米州担当マネジング・ディレクターであるChase McWhorter(チェース・マクウォーター)は、今般、コーヘン&スティアーズのグローバル・インフラ株式戦略の統括責任者でエグゼクティブ・バイス・プレジデントのBenjamin Morton(ベンジャミン・モートン)、およびシニア・アナリストでありバイス・プレジデントのChris DeNunzio(クリス・デヌンツィオ)と対談を行いました。以下は、その対談の抜粋です。
現在、機関投資家はどのような課題を抱えているのでしょうか。
ベンジャミン・モートン:今日直面している主な課題は、成長率の鈍化、インフレ率の継続的な上昇、またグローバルの各地で見られる金利上昇や金融引き締めの動きといった、マクロ経済が変動する環境下でのアロケーションです。その他の課題としては、長引くパンデミックの影響や一部パンデミックに起因するサプライチェーンの混乱、またそれに加えて、ロシア・ウクライナ間の紛争など、他のダイナミクスに関連するものもあります。
コーヘン&スティアーズのグローバル・インフラ株式戦略は、投資家が直面するこうした課題に対してどのような役割を果たしているのでしょうか。
ベンジャミン・モートン:インフラ資産は、経済成長に不可欠な公共サービスを提供するもので、私たちはそれらのインフラ資産を所有・運営する企業の株式に投資しています。インフラ事業は、規制やコンセッションをベースにしたものが多いのですが、中には競争的な性質を持つものもあります。また、インフラ事業者は市場を独占する傾向がありますが、一部には競争的な環境に置かれている事業者もあるものの、そのような場合は長期契約を結ぶ傾向があります。このような特性から、インフラ事業はキャッシュフローが比較的予測しやすいと言えます。上場インフラ株は、過去長期に亘って株式に似たリターンを投資家にもたらしてきましたが、比較的キャッシュフローの高い予見性という特徴を背景に広範な株式よりもボラティリティが低く、魅力的なダウンサイド・プロテクションを備えています。経済成長の鈍化と継続的なインフレ状況が見られる市場において、上場インフラ株は、インフラ企業がインフレを料金の引き上げという形で顧客に転嫁することを可能にする価格設定メカニズムによるダウンサイド抑制と、インフレ“ベータ”によって、その価値を発揮してきました。
上場インフラ株のリターンを牽引する長期的・恒常的なトレンドとは。
ベンジャミン・モートン:私たちは、長期的に上場インフラ株のリターンの重要な原動力となる、いくつかの恒常的なテーマがあると考えています。まず、経済のデジタル・トランスフォーメーションと、それによるデータ需要の増加です。モバイル機器や私たちが使うアプリケーションのデータ容量や接続機器の数は、いずれも大幅に増加しています。このような現象は、データ消費を強力に推進し、そのデータを伝送する通信塔企業やデータを保存するデータ・センターへの魅力的な投資機会を生み出すテーマとなっています。
第二のテーマは、クリーン・エネルギーへの移行です。これは、化石燃料を使用したエネルギー源から再生可能エネルギーへの転換を意味し、潜在的な投資機会を提供するものであると考えます。重要なことは、中長期的には「移行」に明確な道筋があると考える一方、このダイナミズムは、送電網の信頼性やエネルギー安全保障に対する短期的な懸念の中で起きているということです。
第三に、パンデミックからの移動・渡航の需要の回復です。これは旅客輸送セクターにとってチャンスですが、活動正常化のタイミングは世界各地で異なります。
トレンドのひとつに「エネルギー転換」がありますが、上場インフラ株との関連で、もう少し詳しく教えてください。
クリス・デヌンツィオ:私たちは、発電におけるエネルギー・ミックスは時間とともにグリーン・エネルギーの占める割合が高くなると考えています。しかし、投資家はそのタイミングを楽観視しすぎているように思います。しかしながら、一部の人が望むような速さではその転換は起こらなくとも、私たちは、確実に実現すると見ています。例えば、現在米国では発電量の約20%を石炭が占めています。その半分以上は、10年以内に淘汰されることになるでしょう。多くの場合、これらの発電所は耐用年数を迎えています。代替エネルギーのコストを考えると、再生可能エネルギー、そして一部のケースでは天然ガスが解決策になると考えています。その理由のひとつは経済的なものですが、再生可能エネルギーへの移行を政治的・規制的に広く支持していることが挙げられます。米国の74%の州は、再生可能エネルギーに関する何らかの要件を設けており、クリーン・エネルギーは多くの人が思っている以上に超党派の問題なのです。私たちが投資する企業は、電力会社と再生可能エネルギーの開発請負業者の両方ですが、新しい資源と、これらの資源を消費者につなぐための送電・配電インフラの構築から、目に見える成長の機会が得られると信じています。
上場インフラ株のサブ・セクターや企業にとって、エネルギー安全保障にはどのような意味があるのでしょうか?
クリス・デヌンツィオ:私たちは、エネルギーの安全保障が投資家にとって大きな投資機会をもたらすと考えています。安価な天然ガスと力強い成長を見せている太陽光発電が、米国の電力市場の基盤であると考えていますが、米国は今、この2つの資源に問題を抱えています。天然ガス価格は上昇に転じ、太陽光発電には追加関税がかかる可能性があります。天然ガスについては、ロシア・ウクライナ間の紛争と米国の生産量不足が価格上昇の一因となっており、後者については、単に供給を市場に出すためのミッドストリーム・エネルギー・インフラが十分でないことが原因となっているケースもあります。太陽光発電については、米国商務省が東南アジアの数カ国からの輸入について、中国からの輸入に対する既存の関税の回避となっていないかどうかを審査していますが、これらの国々は、米国のソーラーパネル輸入の80%を占めています。もし、追加関税が発動されれば、コストが上昇し、再生可能エネルギーへの移行プロジェクトが遅れる可能性があります。電気自動車の増加、データセンターの増加、製造業の国内回帰、ビットコインの採掘など、電力需要が高まっている環境下で、こうした供給問題が起きています。私たちは、短期的には電力価格は高い環境にあると見ています。長期的には、このような需要の高まりは再生可能エネルギーにとって非常に良いことだと思われます。企業は代替エネルギーの調達を進めており、経済の再開が進めば、供給懸念は緩和されると考えています。
エネルギー転換やエネルギー自給への関心の高まりから恩恵を受ける可能性のある分野以外に、今、注目しているインフラ分野は何でしょうか。
ベンジャミン・モートン:ベンジャミン・モートン:通信塔は、私たちが長期的に非常に期待しているサブ・セクターです。通信塔セクターは高成長・高マルチプルになる傾向がありますが、金利上昇の中で、市場はこのような高成長・高マルチプルの企業を嫌い、2022年は出遅れることになりました。このような特徴を持つセクターは、パンデミック期には好調なパフォーマンスを発揮しましたが、経済の再開期にはアンダーパフォームしました。これはバリュエーション面のから魅力的な投資機会を生み出すと考えています。今年、無線通信事業者の支出に関するセンチメントが改善し、それがこれらの企業の有機的成長にとってどのような意味を持つかという観点から、通信塔は興味深い存在であると考えており、概してポジティブに見ています。これまで通信塔を自社で所有・運営していた無線通信事業者は、事業効率化を図るなか、通信塔事業をスピンアウトまたは売却することで、より市場で評価向上につながることを認識してきたため、独立系通信塔事業のビジネスモデルが世界の多くの地域で採用されつつあります。もうひとつの注目分野は、貨物鉄道です。業績を大きく左右するのは、北米の貨物輸送量です。輸送量は、サプライチェーン問題やインフレ、労働力の確保などの影響を考慮すると、多少一致指標の要素があります。私たちは、貨物鉄道のファンダメンタルズに多くの時間を費やし、それがインフラ事業全体に影響を与えるマクロ的な見解を策定するのに役立つと考えています。
パンデミックから脱却する際、最も影響を受けると思われるインフラ・ビジネスは何でしょうか。
ベンジャミン・モートン:まず、パンデミックによって最も大きな影響を受け、パフォーマンスが悪化したのは旅客輸送事業です。今後、世界各地で渡航制限や都市封鎖が解除されると、空港や旅客鉄道が最も大きな恩恵を受けると考えられます。第二の影響は貨物輸送に関連するもので、港湾と貨物鉄道の両方に影響を及ぼします。効率的な生産と輸送に関わるサプライチェーンや物流の制約のいくつかは、港湾や貨物鉄道の輸送量に影響を与える可能性があります。これらの事業は、世界の様々な地域において様々な形でロックダウンや労働力不足による影響を受けているのも事実です。こうした動きは経済の再開とともに改善し、これらのサブ・セクターのファンダメンタルズをより強固なものにするはずです。
上場インフラ株の投資ユニバースに、多くのプライベート・ファンドの資本が参入しています。この動きは、近い将来、そして長期的にどのような意味を持つのでしょうか。
ベンジャミン・モートン:今日のプライベート・インフラ投資における課題は、プライベート・インフラ・ファンドへの資金流入が止まらず、投資されていない3,300億ドル以上の大規模なドライパウダー(待機資金)が存在することです。プライベート・インフラ・ファンドはこれらの資金を投資する必要がありますが、投資案件数が限られる環境にあります。なぜ、これが上場インフラ株の投資家と関係があるのでしょうか。このような資金は、上場インフラ企業による資産売却や出資持分の売却、あるいは上場企業の身売りの受け皿として、ますます上場市場に流入しています。一部の経営陣の中には、非公開市場と上場市場の資本コストの裁定を利用することの利点に気づいた人もいます。プライベート・インフラ投資は資本コストが低い傾向にあるため、上場インフラ企業にとって利益となるような取引が行われています。このような取引は、上場インフラ企業に強力なバリュエーション・フロアを提供すると考えています。実際、過去15ヶ月の間の上場インフラ企業を対象としたディールは、過去3年間の合計よりも多いのではないかと思われるほど、活発な取引が行われています。このように、プライベート・インフラ投資は非常に活発であり、2022年もこの力強い傾向が継続すると予想されます。
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グローバル・インフラ株の投資リスク
インフラ企業は、様々な政府当局の規制を受ける可能性があり、また、顧客に課す料金に対する政府の規制、業務上またはその他の災害、関税、税法、規制方針および会計基準の変更から影響を受ける可能性があります。また外国証券には、為替変動や流動性など、特有のリスクがあります。外国証券の中には、大企業よりも価格変動の影響を受けやすい中小企業の株式が含まれる場合があります。特定の戦略やファンドの有効性、または達成される可能性のある実際の収益について、表明または保証するものではありません。
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