不動産への賃料上昇の影響は金利上昇による影響を上回る
要 旨
- 当社の基本シナリオは追加利上げではない一方、追加利上げの可能性が意識される環境下、投資家から再び「不動産市場への影響」について足もとで問い合わせが増えています。
- 一般的に金利上昇局面は、GDP成長率の改善、雇用創出の拡大、供給能力の逼迫など、景気拡大を背景として発生します。こうした要因はインフレ圧力をもたらす一方で、不動産市場のファンダメンタルズを支える傾向があります。
- REITのキャッシュフロー、そして最終的なリターンを左右する主要な要因は賃料(家賃)です。現在は、ファンダメンタルズは依然として堅調で、新規供給は抑えられているほか、経済も底堅さを維持しています。不動産オーナーが持つ価格決定力は、賃料の上昇を通じて、直接的に収益へとつながります。
Cohen & Steersの「Real Estate Reel」へようこそ。
根強いインフレと予想以上に底堅い経済成長を受けて、金融政策を巡る見通しは大きく変化しています。
利下げ観測は後退し、米連邦準備制度理事会(FRB)の動向を注視する市場関係者の中には、追加利上げの可能性さえ推測する声も出ています。実際、債券市場では年末までに利上げが行われるとの見通しが一部織り込まれています。
当社は利上げを基本シナリオとしていませんが、その可能性が意識されるだけでも、投資家は不動産への影響を改めて懸念しています。
一見すると、金利上昇はREITにとって逆風のように思えるかもしれません。金利が上昇すると、借入コストが高まり、収益やバリュエーションへの圧力となります。また、米国債利回りが上昇すると、インカム重視の投資家はREITの配当利回りと「リスクフリー金利」を比較し、REITから資金をシフトさせる可能性があります。さらに、金利の上昇は割引率の上昇につながり、特に短期的には不動産価値やREITの株価を押し下げる要因にもなります。
そのため、多くの投資家は、「金利上昇局面ではREITを避けるべき」と考えています。しかし、過去の実績と現在のファンダメンタルズを見ると、実態はそれほど単純ではありません。
金利上昇局面は通常、景気拡大によってもたらされます。GDP成長率の改善、雇用創出の拡大、需給の逼迫によるインフレ圧力の高まりは、同時に不動産市場の需要を支える要因でもあります。
実質金利の上昇後、米国REITは株式を上回るパフォーマンスを発揮

2026年5月31日時点。出典:ブルームバーグ、モーニングスター、CNS独自システム。記載されたデータは過去のパフォーマンスを示しており、将来の結果を保証するものではありません。上記の情報は、コーヘン&スティアーズが運用または管理するいかなるファンドやその他の口座のパフォーマンスを示すものではなく、投資家が上記のようなパフォーマンスを達成できる保証はありません。上記で示された過去の傾向が将来繰り返される保証はなく、また、そのような傾向がいつ始まるかを正確に予測する方法もありません。
実際、歴史的に見て、REITのパフォーマンスにより大きな影響を与えてきたのは金利水準そのものではなく、経済成長と雇用環境でした。
その理由は、金利を押し上げる経済環境そのものが、賃料上昇を促す環境でもあるためです。企業活動や雇用が活発化すれば、不動産需要が増加し、賃料上昇につながります。賃料収入こそがREITのキャッシュフローと最終的なリターンの源泉です。
そして現在、REITのファンダメンタルズは依然として堅調です。
供給の逼迫が賃料の上昇を後押しする見込み
セクター別米国建設着工件数と10年平均の比較(在庫に占める割合)(1)

2026年3月31日時点。出典:CoStar、Cohen & Steers
(1) セクター別の在庫に対する4四半期の着工件数の平均割合。
不動産市場では供給環境も引き締まりつつあります。2026年は、米国の新規建設着工件数が10年平均を下回る年として3年連続となる見通しです。
一方で、失業率は依然として歴史的な低水準近辺にあり、雇用創出も継続しています。また、多数の求人が依然として充足されておらず、経済全体の需要を支えています。
こうした需要の強さと供給制約の組み合わせにより、不動産オーナーは価格決定力を維持しやすくなっています。その結果、賃料上昇が直接的に収益拡大へのつながる環境が続いています。
キャッシュフローの伸びは加速すると予想される
分配可能資金(FAD)の伸び—米国REIT(%)

特に断りのない限り、2026年3月31日時点の数値です。出典:ブルームバーグおよびコーヘン&スティアーズ。記載されたデータは過去の運用実績を示しており、将来の結果を保証するものではありません。
過去のキャッシュフローの伸びは、年ごとの分配可能資金(FAD)の加重平均成長率を示しています。データはコーヘン&スティアーズによるものです。コーヘン&スティアーズのデータは、FAD成長率の異常値(±100%)を除外しており、FTSE Nareit All Equity REITsインデックスの構成銘柄に基づいています。FTSE Nareit All Equity REITsインデックスには、総資産の50%以上を、不動産を担保とする抵当権以外の適格不動産資産に保有し、かつ最低規模および流動性の基準を満たすすべての税制適格REITが含まれています。
REITのキャッシュフロー(FFO:Funds From Operations)で測定されるキャッシュフロー成長率は、今後さらに加速し、過去平均を上回ることが予想されています。これは不動産市場のファンダメンタルズの強さを示しています。
上場不動産には、インフレに対する緩衝材となるような明確な特徴もあります。
例えば、貸倉庫のように賃貸契約期間が相対的に短いセクターでは、市場環境の変化に応じて比較的迅速に賃料を見直すことが可能です。
また、一般企業はコストの上昇ペースが収益成長を上回ると利益率が圧迫されますが、REITの営業利益率は通常約60%と高いため、コスト上昇の影響を一定程度吸収することができます。
加えて、土地、建築資材、人件費の上昇は新規開発案件の収益性を低下させます。その結果、新規供給に対する経済的な参入障壁が高まり、既存物件にとっては競争環境の緩和につながります。
したがって、金利動向は市場の注目を集めやすいテーマですが、それがREITのパフォーマンスを決定づける主要因というわけではありません。賃料動向こそが主要な要因なのです。
現在の環境では、インフレ率は依然高どまっている一方で、不動産市場のファンダメンタルズは健全性を維持しています。供給減少、底堅い雇用環境、そして賃料上昇の継続が見込まれるなか、不動産は多くの投資家が想定している以上に良好な投資環境に置かれている可能性があります。
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金利上昇期間は2000年1月1日から2026年6月10日までです。利回り上昇期間は、2000年5月4日~2000年6月8日、2001年6月26日~2001年7月27日、2001年11月15日~2002年1月4日、2003年3月18日~2003年4月17日、2003年6月25日~2003年8月28日。2004年4月2日~2004年5月21日、2005年3月7日~2005年4月8日、2005年7月1日~2005年8月12日、2005年9月30日~2005年12月13日、2006年3月3日~2006年5月8日、2006年12月22日~2007年1月30日、2007年5月11日~2007年7月9日、2008年3月31日~2008年5月16日、2008年9月12日~2008年11月7日、2010年11月8日~2011年1月7日、2013年5月1日~2013年7月19日、2013年11月18日~2014年1月3日、2015年5月1日~2015年6月18日、2015年8月21日~2015年9月17日、2016年10月24日~2016年12月30日、2018年1月9日~2018年3月7日、2018年9月10日~2018年11月16日、2021年2月16日~2021年3月24日、2021年9月13日~2021年10月21日、2022年1月3日~2022年2月25日、2022年3月24日~2022年6月3日、2022年8月26日~2022年10月25日、2023年5月1日~2023年6月23日、2023年9月19日~2023年11月1日、2024年4月1日~2024年5月13日、2024年10月4日~2024年11月27日。
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