インカム投‍資‍の新‍た‍な選‍択‍肢:ハ‍イ‍ブ‍リ‍ッ‍ド‍証‍券の投‍資‍意‍義

インカム投資の新‍た‍な選‍択‍肢:ハ‍イ‍ブ‍リ‍ッ‍ド‍証‍券の投‍資‍意‍義

インカム投資の新‍た‍な選‍択‍肢:ハ‍イ‍ブ‍リ‍ッ‍ド‍証‍券の投‍資‍意‍義

  • ハイブリッド証券は、金利変動への耐性を兼ね備えた、特異性を有する資産クラス
    ハイブリッド証券は、相対的に金利感応度の低い証券構造で発行されることが多く、規制産業を中心とした安定的な事業基盤を持つ非景気循環型企業が主な発行体となっています。他の債券クラスにはないユニークな投資機会へのアクセスを提供します。
  • 高いインカム収益と魅力的な投資特性
    ハイブリッド証券はこれまで、高水準のインカム収益に加え、良好なトータル・リターンを実現してきました。また、他の債券クラスとの相関が比較的低く、ポートフォリオに分散効果をもたらしてきました。
  • 債券ポートフォリオのリスク・リターン特性を強化する可能性
    伝統的な債券ポートフォリオにハイブリッド証券を組み入れることで、リスク水準を大きく高めることなく、インカム収益およびトータル・リターンの向上が期待できます。また、グローバル市場を対象としたアクティブ運用により、多様な投資機会を捉えることが可能です。

大きな市場規模を有する独自性の高い資産クラス

ハイブリッド証券は、資本市場において差別化された位置づけにありながら、その投資魅力が十分に認識されていないことも少なくありません。発行体にとっては、規制上の資本要件や格付戦略への対応を目的として、資本性と負債性の双方の性格を併せ持つ証券として活用されます。一方、投資家の観点では、株式というよりは債券として機能し、固定または変動型のインカムを提供します。

他の債券クラスと同様にハイブリッド証券は額面で発行され、市場価格は金利動向や発行体の信用力の変化に応じて変動するため、額面を上回る価格(プレミアム)または下回る価格(ディスカウント)で取引されることがあります。

ハイブリッド証券は、企業の資本構成において普通株式とシニア債の中間に位置します(図表1)。発行体の信用力が著しく悪化した場合には、シニア債権者よりも弁済順位が低く、この劣後性が高い利回りや相対的に大きな信用スプレッドの一因となっています。また、利払いは発行体の裁量により繰り延べや停止が可能な仕組みとなっていますが、実際にそのような措置が取られるケースは極めて稀であり、一般的には企業が深刻な財務ストレスに直面した場合に限られます。

投資ユニバースには、大きく分けて永久優先証券(Perpetual Preferred Securities)とハイブリッド型資本性証券の2つの形態があります。永久優先証券は、100年以上の歴史を持つ高配当を支払う優先株式です。一方、ハイブリッド型資本性証券は1990年代に発展した比較的新しい資産クラスであり、長期かつ劣後性を有し、利払いの繰り延べが可能な債務証券です。債券としての性格を持つため、投資家に対して利息を支払います。

図表1
ハイブリッド証券は一般的に信用格付けが高いものの、シニア債よりも弁済順位が劣後
市場規模が大きく流動性の高い投資ユニバース

世界のハイブリッド証券市場は約1.3兆米ドル規模となっており、十分な市場規模と高い流動性を背景に、多様な投資機会を提供しています。市場は大きく、店頭取引市場(OTC市場)と上場市場の2つで構成されています。

市場の大部分を占めるのはOTC市場で取引されるハイブリッド証券であり、その規模は世界全体で1兆米ドル超に及びます。これらの証券は通貨や発行体も多岐にわたり、通常1,000米ドル額面で発行されるほか、機関投資家向けの大口取引が中心となっています。また、一般的な債券と同様に、多くの銘柄が半年ごとに利息や配当を支払います。

OTC市場の中でも重要なセグメントの一つが、偶発転換社債(CoCo債)です。CoCo債は世界のハイブリッド証券市場の約4分の1を占めており、主に米国外の金融機関が規制上の自己資本要件を満たすために発行しています。これらの証券は、発行体の自己資本比率が一定水準を下回った場合や、当局によって経営継続が困難と判断された場合に、元本削減や普通株式への転換が行われる可能性があります。このような構造的なリスクを有する一方、その対価として、他の多くの債券クラスと比較して相対的に高い利回りを提供してきました。

一方、上場市場で取引されているハイブリッド証券も、市場規模はOTC市場と比べて小さいものの重要な投資領域です。これらの証券は主にニューヨーク証券取引所などで取引されており、比較的小口の投資単位で発行されるため、個人投資家も投資しやすい特徴があります。多くは永久優先証券として発行され、一般的に四半期ごとに配当が支払われます。

図表2
ハイブリッド証券市場は、グローバルに市場規模が大きく且つ多様性に富んでいる

ハイブリッド証券市場全体の規模:1.3兆ドル

OTC市場で取引されるハイブリッド証券のもう一つの特徴は、デュレーションが相対的に短く、クーポンが固定利率から固定利率への切り替わるタイプ(Fixed-to-Fixed)や、固定利率から変動利率への切り替わるタイプ(Fixed-to-Floating)の証券が中心となっている点です。一方、上場市場で取引されているハイブリッド証券は、クーポンが長期または永久固定利率の証券が主流となっています。これらの証券構造上の違いについては後ほど詳しく説明しますが、現時点で重要なのは、OTC市場で取引されるハイブリッド証券は、一般的に金利リスクが相対的に低い傾向にあるという点です。また、OTC市場のハイブリッド証券は、投資家にとってより手厚いコールプロテクション(発行体が繰上償還できない期間)を備えている場合があります。多くの新規発行銘柄では、最大10年程度のコールプロテクションが設定されており、上場市場で一般的な5年程度と比べて長い期間の収益確保が期待できます。

伝統的な債券投資を補完

ハイブリッド証券の発行体が、主として大手かつ厳格な規制下にある業種や、安定的で予見可能なキャッシュフローを創出する企業で占められているのは偶然ではありません。代表的な発行体には、銀行、保険会社、公益事業会社、パイプライン事業会社、不動産投資信託(REIT)などが含まれます。特に、永久優先証券などの配当支払いが発行体の裁量に委ねられていることを踏まえると、投資家は一般的に、高い信用力と実績のある事業モデルを備えた発行体を求めます。その結果、将来にわたってインカム獲得の継続性に対する一定の安心感がもたらされています。

こうした特徴から、ハイブリッド証券は社債やハイ・イールド債を組み入れた債券ポートフォリオにおいて、有効な分散投資手段となり得ます。これは、それぞれの債券クラスが異なるセクター構成を有しているためです(図表3)。ハイブリッド証券の主要なセクターは、投資適格社債市場におけるセクター構成比の半分未満にとどまり、ハイ・イールド債市場と比較するとさらに限定的です。例えば、ハイ・イールド債市場ではエネルギー関連企業の比率が比較的大きい一方、ハイブリッド証券市場では、そのような景気感応度や財務レバレッジの高い企業へのエクスポージャーは限定的です。また、一般的な社債市場とは対照的に、ハイブリッド証券市場では金融セクターが市場全体の過半を占めています。金融機関は相対的に事業の安定性が高く、景気循環の影響を受けにくいという特徴を有しています。 

図表3
他の債券クラスとのセクター重複が限定的

セクター別構成比

2023年に発生した一部米国地方銀行の破綻や、クレディ・スイスのUBSによる救済買収を受けて、銀行セクターに慎重な見方を持つ投資家も依然として存在します。しかし、これらの事例は個別要因によるものであり、銀行業界全体が抱える構造的な問題を示すものではありません。実際、金融機関の信用ファンダメンタルズは、世界金融危機以降、大きく改善してきました。バーゼル銀行監督委員会が策定したバーゼルⅢの導入により、世界の銀行に対する自己資本規制や健全性規制は大幅に強化されています。

現在、米国をはじめとする先進国の大手銀行は、資産の健全性、資金調達基盤、自己資本比率のいずれにおいても良好な状態を維持しています。米国の銀行資本は2024年に過去最高水準に到達し、堅調な収益力が資本の積み上げと維持を下支えています。また、銀行の自己資本水準は、平均的にみて2008年の世界金融危機時と比べて約2倍の水準に達しています。当運用チームでは、こうした厚い資本基盤と十分な引当金が、将来的な貸倒損失に対する緩衝材として機能し、金融セクターの信用力を下支えすると考えています。

ハイブリッド証券は、金利上昇局面においても耐性を発揮し、魅力的なトータル・リ‍タ‍ー‍ンの獲‍得‍機‍会を提‍供‍し‍ま‍す‍。

ハイブリッド証券は、金利上昇局面においても耐性を発揮し得る、魅力的なトータル・リターンの獲得機会を提供します。多くの銘柄は長期または永久債の特徴を有していますが、OTC市場ではデュレーションが相対的に短い、クーポンがリセットするタイプの証券が主流となっています(上場市場でも限定的ながら同様の構造が存在します)。こうした証券構造は、金利上昇局面における価格下落圧力の緩和に寄与してきました。

金利リスクの大きさは、デュレーションによって把握することができます。デュレーションとは、債券や優先証券の平均的な残存期間を基に算出される指標であり、金利の変化に対する価格変動の大きさを示します。一般的に、デュレーションが長いほど、金利変動に対する価格感応度は高くなります。すなわち、市場金利が上昇または低下した際の価格変動幅も大きくなります。

ハイブリッド証券市場には多様な証券構造が存在しており、それぞれ異なるデュレーション特性、すなわち異なる金利リスク特性を有しています(図表4)。

図表4
ハイブリッド証券のデュレーションは、その証券構造によって大きく左右される

証券構造の概念図

高いインカム収益と低いデフォルト率がリターンの源泉

ハイブリッド証券は、市場サイクルを通じてみると、債券クラスの中でも相対的に高いリターンを実現してきた資産クラスの一つです。2026年6月末時点までの過去10年間の実績をみると、投資適格社債やハイ・イールド債と比較しても良好なリターン特性を示しています(図表5)。

過去10年間におけるアウトパフォーマンスの最大の要因は、ハイブリッド証券が提供してきた高いインカム収益にあります。また、ハイブリッド証券は高い信用力を有する発行体によって発行されることが多く、ハイ・イールド債のパフォーマンスの重石となるクレジット・イベントやデフォルトの影響も限定的でした。ハイブリッド証券は一般的な債券と同じ格付体系で評価されますが、発行体や証券の構造によっては、同一発行体のシニア債と比較して最大6ノッチ程度低い格付が付与される場合があります。これは、発行体がハイブリッド証券の配当や利払いを停止した場合でも、他の債務に対する支払いを継続できる仕組みがあるため、格付機関がシニア債務よりも高い信用リスクを織り込んでいるためです。

一方で、ムーディーズの調査によれば、同社が格付を付与したハイブリッド証券の減損率(デフォルトまたは利払い不履行)は、グローバル社債における平均的な累積デフォルト率と同程度であったことが示されています。また、S&Pグローバルが40年超にわたり実施した金融機関向け証券の分析では、BBB−〜BB+格付(多くのハイブリッド証券にみられる格付帯)のデフォルト率は歴史的に1%未満にとどまっています。これに対し、ハイ・イールド債のデフォルト率は長期平均で年率3.6%程度となっており、景気後退局面では大きく上昇することもあります。このため、ハイブリッド証券は、高いインカム収益を享受しながらも、ハイ・イールド債と比べて信用損失リスクを抑制できる可能性があり、結果としてより魅力的なリスク調整後リターンが期待されます。

図表5
ハイブリッド証券の堅調な相対リターンは、高水準の利回りによって支えられている

過去10年間の年率換算トータル・リターン内訳(%)

(1)「デフォルトした社債および優先株の回収率、1982年〜2003年」、ムーディーズ・スペシャル・コメント、2003年12月。(2)「デフォルト、格付け移行、および回収:2021年版 グローバル金融サービス業界におけるデフォルトおよび格付け移行に関する年次調査」、S&Pグローバル、2022年12月。

他の資産クラスとの相関が低い

ハイブリッド証券は、株式や他の債券クラスと比較して相対的に低い相関を示しており、分散投資効果が期待できます。その背景の一つとして、ハイブリッド証券の主要な発行体である銀行や保険会社が、ハイ・イールド債など他の債券戦略では必ずしも大きな構成比を占めていないことが挙げられます。

図表6は、様々な期間におけるハイブリッド証券と主要資産との相関係数を示したものです。ハイブリッド証券は他の資産クラスとの相関が比較的低く、ポートフォリオの分散効果向上に寄与します。

図表6
ハイブリッド証券は、他のインカム資産と良好な分散効果が期待できる

ハイブリッド証券とのローリング相関係数(中央値)

伝統的な債券投資の枠を超えた収益機会を求める投資家にとって、ハイブリッド証券は魅力的な投資ソ‍リ‍ュ‍ー‍シ‍ョ‍ン‍とな‍り‍得‍ま‍す‍。

ハイブリッド証券によるリスク・リターン特性の向上

ハイブリッド証券は、他の債券クラスや株式との相関が相対的に低いことから、分散ポートフォリオにおけるリスク調整後リターンの向上に寄与する可能性があります。

図表7では、過去10年間において、伝統的な債券ポートフォリオにハイブリッド証券を組み入れた場合の効果を示しています。ハイブリッド証券への配分は、ポートフォリオ全体のリスク水準を概ね維持しながら、インカム収益およびトータル・リターンの向上につながりました。

過去の実績が将来の運用成果を保証するものではありませんが、この結果は、ハイブリッド証券がポートフォリオの耐久性の向上や安定的なインカム収益の確保に貢献し得ることを示しています。

また、ハイブリッド証券への投資を検討する際には、多くの総合債券ファンドや債券ETFにおいて、ハイブリッド証券の組入比率が一般的に限定的である点にも留意する必要があります。

図表7
ハイブリッド証券への資産配分は、債券ポートフォリオの投資効率の向上に寄与する可能性

過去10年間を前提としたモデル・ポートフォリオ分析

当社運用チームは、ハイブリッド証券を、高いインカム収益、魅力的なトータル・リターン、そして分散効果を兼ね備えた魅力的な資産クラスであると考えています。その背景には、安定した事業基盤を有し、景気変動の影響を受けにくい高クオリティな発行体によって構成される、世界的に大規模な投資ユニバースが存在します。

ハイブリッド証券は、債券ポートフォリオの補完や分散効果の向上に加え、リスク・リターン特性の改善に寄与する可能性があります。一方で、証券構造が複雑であり、市場の効率性も必ずしも高くないことから、投資家にとって分析や銘柄選択が重要となる市場でもあります。

アクティブ運用では、市場環境の変化に応じてデュレーション、信用リスク、金利リスクを機動的に調整することで、価格変動リスクの抑制とリスク調整後リターンの向上を目指します。また、当運用チームの経験上、発行体・セクター・地域を幅広く分散することで、より多くの投資機会を捉えるとともに、リスク管理の高度化が可能になると考えています。

現在の市場環境においては、グローバルな投資対象へのアクセスに加え、ハイブリッド証券市場および発行体に関する専門的な調査・分析に基づくアクティブ運用が、投資目標の達成に向けた有効なアプローチであると考えています。

ハイブリッド証券市場に精通した運用チームは、複雑な市場環境の中で投資機会を捉え、魅力的なトータル・リ‍タ‍ー‍ンとイ‍ン‍カ‍ム収‍益‍の実‍現‍を目‍指‍し‍ま‍す‍。

レポートをダ‍ウ‍ン‍ロ‍ー‍ド
著者について
Elaine Zaharis-Nikas, CFA イレーン・ザハリス・ニカスは、エグゼクティブ・バイス・プレジデントで、ハイブリッド証券戦略統括責任者であり、ハイブリッド証券戦略のシニア・ポートフォリオ・マネージャーとして、同戦略を統括する。2003年に入社する以前は、JPモルガン・チェース社でクレジット・アナリストとして5年間務め、また、同社で内部監査人として3年間の経験を持つ。ニューヨーク大学にて学士号取得。ニューヨーク拠点。
Jerry Dorost, CFA ジェリー・ドロストは、シニア・バイス・プレジデントで、ハイブリッド証券戦略のポートフォリオ・マネージャー。リサーチ・アナリストして米国銀行セクターも担当。2010年に入社する以前は、シティ・グループにて銀行、住宅ローン貸付業者やその他金融機関のリサーチ業務に従事。コロンビア大学で学士号を取得。ニューヨーク拠点。
Robert Kastoff, CFA ロバート・カストフは、シニア・バイス・プレジデントで、ハイブリッド証券戦略のポートフォリオ・マネージャー。リサーチ・アナリストして不動産および通信セクターも担当。2013年に入社する以前は、ムーディーズ・インベスターズ・サービス社のアソシエイト・アナリストとして、ストラクチャード・ファイナンス取引のパフォーマンス調査・分析を担当。 タフツ大学で学士号を取得。ニューヨーク拠点。
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