Nareit REITweekを受けての3つのポイント

 
  • サンベルト地域の賃貸集合住宅市場は引き続き供給過剰が続く一方、沿岸部ではより強固なファンダメンタルズおよび価格決定力を確認。
  • 貿易政策の不透明感が産業施設需要に影響し、港湾周辺地域では需要減退や新規リース契約に関する判断の遅れが見られる。
  • オフィス市場の回復を確認。一等地に位置する質の高い物件がけん引役となっており、西海岸市場におけるリーシングも大幅改善の可能性。

2025年6月、20を超える異なる不動産物件タイプを代表する90社以上の上場不動産投資信託(REIT)がニューヨークで開催されたNareit REITweekに参加しました。当社不動産証券戦略運用チームも現地で多くのREITの経営陣と面談し、2025年後半に向けた各社の取り組みについて話を聞きました。

今月の注目トピックは、賃貸集合住宅市場の動向、貿易政策と産業施設リートのパフォーマンス、そしてオフィス市場の回復状況です。

1. サンベルト地域の集合住宅は、足もとの稼働率が過去長期平均をやや顕著に下回っており、正常化には時間を要するとの見方

集合住宅の需要について全米で調査したところ、多くのREITは、沿岸部市場では想定以上の賃貸実績を報告し、サンベルトでは概ね想定通りの結果となりました。同地域における供給過剰の解消には少なくともあと1年かかると当社は見ています。というのも、新規開発物件の供給が今なお続いているからです。

市場レベルで見ると、サンベルト地域の稼働率は過去長期平均より約3%低く、沿岸部とは大きな乖離が生じています。

図 1
サンベルト地域の稼働率は長期平均を下回り、正常化には時間を要する

過去の空室率と長期平均との比較

仮に現在の需要が持続し、且つ雇用の伸びが今後も減速しなかったと仮定しても、サンベルトの稼働率が安定するまでには1年以上かかる可能性があります。

一方で、沿岸部は供給が限定的なため、特に西海岸では強い価格決定力が確認されています。

2. 「解放の日」の関税引き上げによる影響が今後現実のものになる可能性

次に注目しているのは、産業施設リートが関税引き上げに関わる不透明感にどう反応しているかという点です。大半の産業施設リートは「解放の日」後のリース環境について「心配したほどでもなかった」としていますが、テナントは新規リース契約の判断を遅らせており、貿易政策の明確化を待つ姿勢です。消費動向が産業施設需要の最も重要なドライバーの一つではあるものの、多くの沿岸市場では貿易取扱量も需要に大きく影響します。

図 2
港湾統計は、解放の日の関税引き上げによる影響は今後顕在化が見込まれることを示唆

ロサンゼルス港におけるTEU(1)ベースの取扱量および前年比変化率 (2025年)

ロサンゼルス港の5月のコンテナ取扱量は5%減少しましたが、これは関税引き上げを目前にした4月の駆け込み需要の反動と考えられます。こうした不透明感が長期化すれば、特に港湾関連活動への依存度の高いREITではリースの抑制要因となるでしょう。

3. オフィス市場は回復の兆し

最後に、オフィス・セクターに注目してみましょう。NAREITは、大半のREITがポジティブな傾向にあり、不透明なマクロ環境下でもオフィスのリース活動が続いていると報告しています。パンデミック以降、長期間にわたり新規リース契約の決断を見送ってきたテナントも、従業員のオフィス回帰に向けて適切なスペースを確保する動きを見せています。

とりわけ、テナント誘致や物件のアップグレードを行うための資金力を持つオフィスREITが保有するAクラスの立地が良く質の高い物件や「トロフィー物件」では、セクター全体よりもはるかに速いスピードでファンダメンタルズが改善しています。中でも西海岸市場は、過去18ヶ月間で顕著な回復を遂げたニューヨーク市のオフィス市場に匹敵する勢いで回復する可能性があります。

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著者について
Ji Zhang, CFA ジ・ジャンは、シニア・バイス・プレジデントで、グローバル不動産証券戦略のポートフォリオ・マネージャー。2018年に入社する以前は、ニューバーガー・バーマンの不動産証券チームでアナリストに従事。それ以前は、バンクオブアメリカ・メリルリンチおよびマッコーリーキャピタルにてエクイティ・リサーチを担当。マサチューセッツ工科大学にて学士号を取得。ニューヨーク拠点。
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