足元においてグローバル不動産証券が米国不動産証券をアウトパフォームしている背景

 

過去数年においては米国が不動産証券市場全体の牽引役となっていたものの、足元ではグローバル不動産証券が復活の兆‍しを見‍せているー‍投‍資‍家の期‍待と資‍産配‍分が再‍構‍築されるフ‍ェ‍ー‍ズに

  • アジア太平洋および欧州不動産証券市場が牽引する格好で、2017年以来はじめてグローバル不動産証券が米国不動産証券をア‍ウ‍トパフ‍ォ‍ー‍ムし‍てい‍ま‍す。
  • 相対的に割安なバリュエーション、不動産セクターの成熟および支援的な政策等がグローバル不動産産証券市場の力‍強‍い回‍復を後‍押‍しし‍てい‍ま‍す。
  • 国やセクターごとに異なるマクロ環境と長期にわたる成長要因が存在するなか、分散投資は非‍常‍に重‍要であ‍ると考‍えていま‍す。

1) グローバル不動産証券市場のパフォーマンスが優位に

グローバル不動産証券市場は、2017年以来はじめて米国不動産証券市場をアウトパフォームしています。

2025年初来9月末時点まで、グローバル不動産証券は10.4%の上昇となった一方、米国不動産証券は同期間における上昇率は4.5%に留まっています。

グローバル不動産証券市場に占める米国の割合は60%以上にもかかわらず、このような結果となったことは、アジア太平洋、欧州および新興国不動産証券市場のパフォーマンスが非常に好調だったことを物語っています。

アジア太平洋不動産証券市場は27.4%上昇し、地域別ではトップとなっています。それに次いで、欧州不動産証券市場は17.9%、新興国不動産証券市場は16.2%の上昇となりました。

このような市場環境は近年の状況とは対照的であり、これまでは米国が資産の比較的安全な回避先として機能し、グローバル全体と比較して堅調な成長を提供してきました。アジア太平洋は政治的な困難に直面し、欧州は経済成長鈍化に苦しんできました。

過去の5年間では、米国不動産証券市場は年率で7%のリターンを提供してきた一方、欧州と新興国不動産証券市場はマイナス・リターンとなり、アジア太平洋不動産証券市場の年率リターンはわずか3.5%に留まっていました。

今年は、近年のこういった傾向が逆転した年となりました。

政治的な不確実性が米国の経済成長への期待に影を落とした一方で、グローバル市場全体の経済見通しは大幅に改善しました。その結果として、例えばこれまで4年連続で2桁のマイナス・リターンとなった中国不動産証券市場は2025年初来で約30%のリターンを記録しました。また、日本、スペイン、香港、オランダの不動産証券市場も、年初来で20%超のリターンを創出しています。

不動産証券 国別パフォーマンス

2025年初来 国別トータル・リターン(現地通貨ベース)(1)

2) グローバル不動産証券のパフォーマンスが堅調な背景

グローバル不動産証券市場の回復の背景には、魅力的なバリュエーション、ファンダメンタルズの改善、そして多くの国々における良好なマクロ経済環境が背景にあると考えます。

まず、年初時点において、欧州とアジア太平洋不動産証券市場は著しく割安なバリュエーションで取引されていました。

年初において、米国不動産証券は純資産価値(NAV)に対して小幅ながらプレミアムで取引さていました。これとは対照的に欧州と日本の不動産証券はそれぞれ23%および29%のディスカウントの水準にありました。

その後、ディスカウント幅の差異は若干縮小したものの、グローバル不動産証券は依然として相対的に魅力的なバリュエーションで取引されています。

二つ目に、欧州およびアジア太平洋不動産証券市場では、データセンター、貸倉庫、通信塔やヘルスケア等の新しい不動産セクターの大半が依然として成熟段階にあるため、有利な需給バランスが良好なファンダメンタルズを下支えしています。

外部環境の不確実性の高まりを受けて、欧州とアジア太平洋諸国の各国政府は、経済成長を後押しするために、国内消費を促進するより積極的な支援策を施行していることも注目に値します。

特に日本では、ガバナンスの強化と株主還元の向上を目的とした改革施策に企業がより重点を置くようになってきており、この傾向はアジア全域に広がりつつあります。

3) 当社の不動産証券市場への見通し

今後の不動産証券市場の方向性は?

欧州において生産性が向上し経済成長を高められるか否か等の不透明要素は残るものの、グローバル不動産証券は資産クラスとして良好な位置づけにあると考えています。

多くの不動産証券市場は依然としてNAVに対して大幅なディスカウント水準で取引されています。一方で各社の財務体質は引き続き強固な状況にあります。また、投資家の多くは米国偏重の資産配分を行ってきたため、現状として米国以外のグローバル不動産証券市場がこれまでの出遅れを追いつく段階にあるとみています。

これは決して米国不動産証券市場のパフォーマンスが大きく劣後すると考えているわけではなく、グローバル不動産証券市場がようやく追随してきていることについて言及しています。

実際、グローバルで観測されている一部の追い風となるようなトレンドは、米国不動産証券市場にとっては有利な環境であるにもかかわらず、恩恵を享受できると考える不動産証券は依然として広範な株式市場に対して大きくディスカウントで取引されています。

これらには、AIやデーターセンター利用拡大といった長期的にわたる社会の構造変化を背景とした成長要因や、高齢化社会における高齢者住宅への需要の高まり、実店舗をベースとする商業施設の進化と再興等が含まれています。

社会構造の変化が長期にわたる成長を牽引

経済成長が鈍化し長期金利が低下するマクロ経済環境は、歴史的に商業用不動産にとって好ましい市場環境であり、これまで恩恵をもたらしてきました。これはグローバルの多くの市場に当てはまるマクロ環境ではあるものの、もちろんすべての国や地域において同一であるわけではありません。こうした相違を踏まえ、不動産証券においてはアクティブ運用を積極的取り入れることが極めて重要であると考えます。

足元におけるグローバル不動産証券市場のパフォーマンスは、当社の長期的な見解に基づくと考えます。それは、経済、技術、政治サイクルが分岐するなか、グローバルな分散投資が必要不可欠であるということです。

レポートをダ‍‍ウ‍‍ン‍ロ‍‍ー‍‍ド
著者について
Ji Zhang, CFA ジ・ジャンは、シニア・バイス・プレジデントで、グローバル不動産証券戦略のポートフォリオ・マネージャー。2018年に入社する以前は、ニューバーガー・バーマンの不動産証券チームでアナリストに従事。それ以前は、バンクオブアメリカ・メリルリンチおよびマッコーリーキャピタルにてエクイティ・リサーチを担当。マサチューセッツ工科大学にて学士号を取得。ニューヨーク拠点。
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