実物不動産価格は底打ち:今こそが魅力的なエントリー・ポイント

実物不動産価‍格は底‍打‍ち:今こ‍そが魅‍力‍的なエ‍ン‍ト‍リ‍ー・ポ‍イ‍ン‍ト

実物不動産価‍格は底‍打‍ち:今こ‍そが魅‍力‍的なエ‍ン‍ト‍リ‍ー・ポ‍イ‍ン‍ト

他の資産クラスへの配分が次第に魅力を失っているなか、実物不動産市場はリセットを迎えている。

  • 実物不動産の価格は既に調整済み
    商業用不動産の価格が底打ちし、安定した収益、価値の上昇や税制上の効率性を実現してきた同資産クラスへの魅力的なエントリー・ポイントが生まれています。
  • 限られた供給量と堅調な需要が同時に発生
    借入コストと建設費の上昇を背景に、新規物件供給は鈍化していますが、ほとんどの物件タイプでは今も需要が堅調で、商業用不動産にとって概して好ましい環境となっています。
  • 株式とプライベート・クレジットの投資妙味が低減
    長期にわたり続いていた超低金利時代が終焉を迎えた今、他の資産クラスの魅力が低下しています。株式(上場および非上場)のバリュエーションは、過去最高水準になっています。また、クレジット・スプレッドは過去最低水準近くで推移しています。さらに、プライベート・クレジットには亀裂が生じつつある状況です。

商業用不動産の価格は底打ち

実物不動産価格はピークから底値まで平均して20%下落していますが、それは2022年から2023年にかけて実施された10回の利上げを背景に、市場が10年近くにわたるゼロ金利状態から脱却し、資本コストが大幅に上昇したことに起因しています。

こうした実物不動産市場の価格調整は、他の資産クラスの魅力が低下している今、従来から安定した収益、価値の上昇および税制上の高効率性を実現してきた同資産クラスに投資を行う魅力的なエントリー・ポイントとなっていると考えます。

株式(上場および非上場)のバリュエーションは過去最高水準にあり、上場企業のリターンはAI主導の急成長を享受している一部の企業に集中する傾向が強まっています。クレジット・スプレッドは過去最低水準で推移しており、債務不履行が増えたり、経済情勢が悪化したりした場合における緩衝余地がほとんど残っていない状況となっています。

長きにわたる超低金利時代が終焉を迎えた今、当社はこれらの市場は上昇余地よりも下落リスクの方が大きいとみています。特にプライベート・クレジット市場では、切り上がりすぎたバリュエーションに対する懸念、審査水準の低下、そして複数の注目案件の課題を背景としたデフォルト率の上昇といった形で、亀裂が見え始めています。

対照的に、実物不動産市場では価格の調整が進んでいます。NCREIF-ODCE指数で計測される米国の実物不動産市場は、現在5四半期連続でプラスのリターンを達成しています。これは2022年末以来、7四半期連続でマイナス・リターンが継続した後の動きとなっています。

実物不動産の価値は鑑定評価に基づくため、新たな市場環境への適応は上場不動産証券ほど迅速ではなく、価格調整に長い時間を要します。しかし価格調整が完了すると、上昇モメンタムが持続する傾向があります。このような一貫したプラスのリターンは、単なる一過性の反発ではなく、市場底値が形成されたことを示唆しています。

図1
コア実物不動産は底打ち

2022年第3四半期ピーク以降の四半期別・累積リターン(a)

このパターンは新たな投資機会の出現を示唆しています。1978年以降、商業用不動産の低迷期がわずか3回しか発生していません。最初の2回の低迷期の後には、いずれも強いリターンが見られました。保証はないものの、今回も同様の結果が期待されます。これは、商業用不動産のリターンがプラスに転じると、特にFRBの金融緩和サイクルの効果が定着するにつれ、プラスの状態が維持されやすい傾向と一致しています。

図2
過去の低迷期の後は、持続的に高いリターンを創出

NCREIF不動産指数:過去におけるマイナスのリターンだった年の後の平均リターン(a)

一部の不動産セクターは他のセクターに先駆けて価格調整が進んできたが、実物不動産市場は概して底打ちした可能性が高いと考えられます。2023年後半に、商業施設が最初に底打ちしました。その後、近しい時期に産業施設はも底打ちし、集合住宅とオフィスはさらに下落が続いたものの、その後それぞれ2024年第1四半期と第4四半期に底打ちしました。

図3
不動産セクター全体で価値が安定化

2022年第3四半期のピーク以降の累積リターン

Values have stabilized across property sectors

ただし、今後すべての物件タイプで価格が上昇するとは限らず、また、同等のペースで上昇するとも限りません。商業施設は現状から回復基調に入ると見込まれますが、すべての物件タイプが一律に上昇するわけではありません。物件タイプ、ビジネスモデル、立地、バリュエーションがそれぞれ異なるため、物件の選定が重要となります。

とはいえ、商業用不動産の期待リターンを後押しする需給動向に基づく投資機会があると考えています。一部の物件タイプには比較的大きな制約がありましたが、経済の不確実性、借入コストの上昇、建設コスト(特に資材と賃金)へのインフレ圧力により、新規建設が減速しています。

資材と人件費のインフレに加え、借入コストの上昇により、建設コストが購入コストを上回る状況が生じています。新規建設を抑制するこのような要因が、既存物件の賃料上昇を加速させると考えられます。モーテンソンの建設コスト指数によると、非住宅建設コストは2020年以来40%以上上昇し、直近12ヶ月間でも約7%の上昇を示しています。

その結果、新規物件供給が近い将来に増える見込みはほとんどありません。不動産価格が再調達コストに連動する傾向があることを踏まえ、現状のデータは不動産を取得する好機を強く示唆していると考えます。

図4
新規建設よりも既存物件の取得の方が割安な状況

商業用不動産価格リターン対実物不動産再調達コスト(指数=100)(a)

実際、2024年および2025年(11月25日時点)において、米国の主要な不動産タイプごとの建設は着工件数は、いずれも過去10年平均を下回っています。

図5
限定的な新規供給が賃料上昇を下支え

米国における着工件数と過去10年平均の比較(セクター別、在庫比率)

供給減少と堅調な需要が相まって、商業用不動産のファンダメンタルズと物件価値の向上を牽引すると予想されます。この傾向は、足元の物件取引の増加にも表れ始めていると考えられます。

図6
ファンダメンタルズの向上が不動産市場の回復を下支え

1平方フィートあたりの賃料成長率(市場賃料と稼働率で測定)(a)

実物不動産の株式や債券との比較

足元では、実物不動産は他の資産クラスと比較して非常に魅力的です。

第一に、株式市場は上場および非上場を問わず過去最高水準のバリュエーションとなっており、過去10年以上に及ぶスーパーサイクルで達成してきた平均二桁のリターンの実現は困難であるとみています。

株式市場の勝ち組は、人工知能への資本投資とリターンの可能性にますます集中するようになっています。バリュエーションが高くなるなか、投資家はこうした集中したリスクから資産配分の分散を検討すべきだと考えています。

図7
他のリスク資産と比較してバリュエーションが割安

商業用不動産、株式、ハイ・イールド債のバリュエーションのパーセンタイル(a)

一方、プライベート市場が過去10年間の驚異的なリターンと、おそらく誤解されていると思われる低ボラティリティを再現するのは困難であると考えられる理由は、いくつかあります。

前述の通り、プライベート資産が安定した超低金利で投資をレバレッジする機会はほぼ消滅しました。同時に、プライベート・エクイティおよびプライベート・クレジットへの資金流入が急増しており、これが将来のリターンに悪影響を及ぼすと考えられます。

プライベート・クレジットの運用資産総額が、2009年の10倍に相当する2兆米ドルへと爆発的に成長したことで、貸し手の間での競争が激化しています。より多くの貸し手が借り手を求めている状況により、審査基準の低下についての懸念が生じています。同一案件を争って資本が集中していることは、プライベート・クレジットのリターンが従来の社債市場水準へと漸進的に収束する可能性を示唆しており、そのため、魅力的な利回り要素にもかかわらず、同セクターが「あらゆる市場環境に対応可能」であるという評価に疑問を投じています。

プライベート・エクイティ分野では、利上げ前の最後の通期となった2021年以来、S&Pグローバルの取引額ベースで測定したエグジット件数は、ほぼ半減しています。その結果、投資案件が滞留し、資本が拘束され、保有期間が延長し、バリュエーション・リスクが増大し、最終的には投資家の潜在リターンが希薄化しています。

これに対し、次のサイクルに向けて既に価格調整を終えている不動産の魅力がますます高まっています。特筆すべき指標として、次のようなものが挙げられます。現在、S&P500構成セクターの中で、過去5年間の平均収益倍率を下回って取引されているのは、不動産セクターのみです。

REITが不動産市場における現時点におけるバリュエーション観点での投資機会をリアルタイムで示す指標であることを踏まえると、実物不動産のリターンも良好であると考えられます。

図8
過去5年の平均収益倍率を下回って取引されているGICSセクターは、不動産セクターのみ

GICSセクター別の現在の収益倍率 vs. 5年平均(a)

実物不動産に長期的に資産を配分する魅力

価格調整、需給動向、そして他のオルタナティブ資産への配分と比較した場合の商業用不動産の相対的に有利な特性は、非常に魅力的です。これにより、足元の市場環境は、実物不動産に資産配分をすることによって長期的な投資メリットを享受できる、またとない魅力的な機会が生まれていると考えられます。

商業用不動産は、いくつかの納得できる理由からこれまで敬遠されてきた側面もあります。2025年不動産配分モニターの調査によると、機関投資家は4年ぶりに不動産への目標配分比率を引き下げましたが、その幅はわずか10ベーシスポイントでした。しかしながら、これらの投資家による不動産への実際の配分率は、目標値を90ベーシスポイントも下回っています。

一方、個人投資家は従来の60/40の伝統的なポートフォリオを分散する際において、株式や債券に次ぐ世界第3位の資産クラスである不動産を完全に見落とすことが多いように思います。

機関投資家は、広範なリサーチや専門アナリスト(多くは数十年にわたる経験を有する)へのアクセスに加え、より多くの投資手法を利用でき、実物不動産への投資も可能なため、平均して個人投資家の3.5倍の資本を不動産に配分しています。

魅力的なバリュエーションと高いインフレ感応度を踏まえると、実物不動産は、特に上場不動産と組み合わせることで、投資家の分散投資を促進し、より強靭なポートフォリオ構築、シャープレシオの改善に寄与すると考えられます。特に実物不動産は、他の資産クラスと比べ、一部の投資家にとって税制上の効率性も高く、より高利回りを得る機会を提供できる資産クラスであることも注目すべきです。

図9
一部の投資家にとって税制上のメリットも期待できる安定性の高いインカム源

10年間の平均配当利回り(a)

また、不動産は、伝統的な資産クラスとの相関が低い傾向にあり、株式や債券のバリュエーションが過去最高水準にあるなか、投資家がより一層の分散投資を求める状況下において、その重要性はさらに増しています。

最後に、富裕層の投資家の多くは不動産を所有することで不動産への資産配分が十分であると誤解しがちですが、不動産への直接投資には流動性の低さ、高額な取引費用(売買時最大5%)、物件管理の手間(または管理会社委託費用)、および多額の初期費用が伴います。

実物不動産ファンドへの投資は、分散投資効果、税制優遇(一部の投資家に限り)、直接投資よりも高い流動性、低コストでの参入、そして長期的に安定した収入やリターンの可能性を提供します。実物不動産価格の底打ちは、これらの特性を享受できる可能性のある魅力的な投資機会を提供しています。

市場における価格調整は、実物不動産の長期的なメリットを活用する、またとない魅力的な投資機会を生み出しています。

レポートをダ‍ウ‍ン‍ロ‍ー‍ド
著者について
James Corl ジェームズ・コールはエグゼクティブ・バイス・プレジデントで実物不動産戦略統括責任者。かつてコーヘン&スティアーズに11年在籍し、2004年から2008年までは不動産担当チーフ・インベストメント・オフィサーを務める。2020年に再び入社。直近では、シギュラー・ガフ&カンパニー社で、不動産統括責任者として、実物不動産市場に特化した不動産投資グループのリーダーを務める。それ以前は、ハイトマン・キャピタル・マネジメント社およびクレディスイス・ファースト・ボストン社で不動産投資業務に携わる。スタンフォード大学より学士号、ペンシルバニア大学よりMBAを取得。ニューヨーク拠点。
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