株式中心のポートフォリオにREITがもたらす投資効果

株式中心のポートフ‍ォ‍リ‍オにREITがも‍た‍ら‍す投‍資‍効‍果

株式中心のポートフ‍ォ‍リ‍オにREITがも‍た‍ら‍す投‍資‍効‍果

日本では退職後に向けた資産形成を後押しする制‍度が整‍いつ‍つあ‍る一‍方で、多くの投‍資‍家のポ‍ー‍トフ‍‍ォ‍リ‍オが株‍式に偏‍る中、分‍散‍投‍資の余‍地が残‍さ‍れ‍てい‍ま‍す。

  • 「後知恵バイアス」を避けることが重要
    FOMO(取り残されることへの恐怖)は、ポートフォリオ構築に大きな影響を与えがちです。しかし、リターンを追いかける行動は、ポートフォリオのボラティリティを高め、大きな変動リスクを招きかねません。ポートフォリオの耐性を強化するには、割高感のあるテクノロジー株と必ずしも値動きが連動しない不動産資産への投資を検討することが有効です。
  • 付加価値をもたらす4つの要素
    REITは歴史的に、高いリターン、魅力的かつ成長性のあるインカム、長期的な株式との低相関性、そしてインフレ耐性という4つの特性により、株式中心のポートフォリオを補完してきました。
  • ドットコム•バブルの教訓
    REITがどのようにポートフォリオの耐性向上に寄与し得るのかを理解するため、1990年代のドットコム・ブームを振り返り、株式市場が50%超下落した局面において、上場REITが果たした下支えの役割に注目します。

分散を無視した株式偏重ポートフォリオ

日本の投資家の間では、投資に対する慎重な姿勢に変化が見られ、老後に向けて資産形成を目指す動きが予想以上に速いペースで進んでいます。制度拡充後の新NISAへの資金流入は、政府が設定した2027年の目標である56兆円を既に上回っています。

日本政府は、NISAの投資限度額を引き上げ、柔軟かつ恒久的な制度とすることで、特に若い世代の投資家に対し、祖父母世代が重視してきた現金貯蓄から脱却し、成長性の高い資産へと目を向けることを促しています。これは、日本における老後資産不足の解消に寄与すると見込まれており、NISA改革の重要な目的の一つでもあります。

しかし、NISA口座への資金流入は分散の観点では十分とは言えません。モーニングスターは、NISAへの資金流入の大半が米国およびグローバル株式への投資に集中している点に警鐘を鳴らしています。(1)実際、2025年前半には、NISA対象ファンドへの資金流入の85%が株式ファンドに向かい、債券および不動産ファンドの流入はそれぞれ僅か0.5%、0.4%にとどまりました。

これはある意味では自然ともいえます。S&P500種指数は2023年から2025年までの過去3年間にわたり、それぞれ26.3%、25.0%、17.9%の2桁のリターンを記録しました。FOMOはポートフォリオ配分に影響を及ぼすことが多く、投資家は、AI革命を牽引する「マグニフィセント・セブン」に代表されるテクノロジー企業群のリターンを追い求める傾向があります。

しかしながら、現在の株式市場は過去最高水準にあり (図1)、AI主導の急成長の恩恵を受ける少数の企業への集中度が高まっている点には注意が必要です (図2)。

図1
米国株式のバリュエーションは史上最高水準
図2
米国株式市場の集中度は、ここ10年で急上昇

日本の投資家が高値圏の株式に資金を集中させる中、AIに対する過度な期待が後退した場合、ポートフォリオのボラティリティが高まる可能性があります。実際、市場参加者がAIの将来性やインフレの長期化がもたらす影響を見極めようとする中で、2026年にはすでにボラティリティの上昇が顕在化しています。

NISA改革は、リスク資産への投資を促進するという点で適切な方向性を示していますが、その一方で投資家は、長期的な資産形成を実現する上で重要な分散と耐性を備えたポートフォリオの維持を犠牲にしているように見受けられます。

AIが注目を集めるなかで、2026年は賃料上昇の見込み

現在の株式の極端なバリュエーション水準は、2026年に必ずしも株式市場の大幅な調整を意味するものではなく、またそれ自体が市場調整の引き金となるともいえません。とはいえ、1945年から2025年の市場データから見ると、S&P500種指数はおおむね6年に1度の頻度で、20%以上の下落を伴う弱気相場を経験しています。

弱気相場においては、株式との連動性が低い債券や不動産(不動産は株式、債券に次ぐ世界第3位の市場規模)などの資産を組み入れた、耐性の高いポートフォリオが有効とされてきました。しかしながら、2022年にインフレ率が上昇する局面では、株式と債券が連動する場面も多く見られるようになりました。

2000年のドットコム・バブル崩壊時にその耐性を実証した上場不動産証券は、多くの投資家にとって有効な分散投資の手段となり得ます。足元の不動産のバリュエーションは、特に米国株式およびグローバル株式と比較して魅力的な水準にあり、テクノロジー関連株中心のポートフォリオを補完する上で、有利な投資機会を提供しています。

実際、REITのバリュエーションは現在、過去20年間の中央値を大幅に下回る水準 (-8.2倍、図3)にあります。当社では、データセンターや高齢者向け住宅といった次世代REITセクターが牽引役となり、2026年には米国REITが10%台前半から半ば程度のリターンを生み出すと予想しています。

図3
米国REITは、株式と比較して魅力的な割安水準

人口動態の変化と技術の進歩

マグニフィセント・セブンが大きな注目を集める一方、ITインフラの構築において不動産が果たしている重要な役割は見過ごされがちです。現在の不動産市場は、オフィスや集合住宅にとどまらず、強力な構造的テーマに支えられた次世代REIT (図4)まで大きく広がっています。

例えばこの10年間で、多くの通信鉄塔会社がREITへと転換し、現在では米国REIT市場の構成比上位のセクターのひとつとなっています。データセンターREITも、当初はクラウド・コンピューティング需要の拡大を背景に成長し、最近では大規模言語モデル(LLM)や生成AIの競争を追い風に成長してきました。産業施設セクターでは、REITがAmazonなどのeコマース大手向けの物流センターを運営するほか、サプライチェーンの国内回帰(オンショアリング)を支える新たな倉庫需要にも対応しています。

高齢化が進むなか、高齢者向け住宅セクターも急成長中です。世界の80歳以上の人口は2050年までに4億5,900万人に達すると予想され、(1)これは2021年時点(約1億5,500万人)のほぼ3倍に相当します。高齢者向け住宅の需要が供給を上回る状況の中で、介護付き住宅などの高齢者向け施設は高い価格決定力を有しており、REIT投資家にとって追い風となり得ます。

これらの次世代不動産セクターは、人口動態の変化などの長期的な構造テーマに支えられており、景気循環の影響を受けにくい点が特徴です。現在では、米国REIT市場の過半を占め、世界の上場不動産市場全体でも約半分を構成しています。

現在の上場不動産証券市場は、オフィスや集合住宅にとどまらず、強力な構造的テーマに支えられた次世代REITへと大きく広がっています。
図4
次世代セクターを通じて、強力な構造的成長テーマにアクセス

4つの特性がもたらす好ましい組み合わせ

現代の次世代REITを牽引する長期的な構造テーマは、投資家に対して将来にわたる魅力的な成長機会を提供しています。一方で、REITがこれまでどのように株式ポートフォリオを補完してきたのかを、リターン、インカム、相関、インフレ耐性という4つの観点から、改めて検証することも重要です。

過去25年間において、REITは米国で年平均9.0%、グローバルで年平均7.2%という高い絶対リターンを記録しています (図5)。この実績は、賃貸収入に裏付けられた継続的なキャッシュフローを生み出す、高品質不動産の取得・開発に焦点を当てた、安定的なビジネスモデルによって支えられています。

図5
上場REITは2000年以降、魅力的なリターンを提供

2. 成長性を備えた魅力的なインカム

REITは配当を支払う資産であり、その利回りは現在、グローバルでみても株式の利回りを大きく上回っています (図6)。キャッシュフローを重視するビジネスモデルであるREITは、課税対象となる収益のほぼ全額を株主へ分配することが義務付けられています。こうした最低分配基準を満たすため、REITは一般的に、賃料収入や純利益の成長に応じて配当を増額する傾向があり、その結果、投資家にとっては、持続的な配当成長がもたらされてきました。

図6
REITは魅力的な配当を提供

3. 分散効果をもたらす相関特性

REITは、短期的には株式と高い相関を示すことがありますが、これは他の上場証券と同様に、市場心理の影響を受けるためです。しかし、長期的なREITのパフォーマンスは、実物不動産市場特有の需給動向に強く影響される傾向があり、投資家にとって有効な分散効果をもたらします (図7)。

図7
上場REITと株式の相関は時間の経過とともに低下

4.歴史的に見たインフレ耐性

上場不動産証券は、歴史的にインフレ環境下で良好なパフォーマンスを示してきました。これは、短期および長期の双方のパフォーマンスに好影響を与え得るいくつかの特性を備えているためです(下図参照)。

グローバルREITのインフレベータは0.9であり、これはインフレ率が前年の予想を1.0%上回るごとに、REITのリターンは長期平均を0.9%上回ったことを意味します (図8)。

図8
上場REITは、インフレ局面に良好なパフォーマンスを発揮

インフレベータ(1991年~2025年末)

ドットコム・バブルに学ぶFOMOの教訓

今日見られるFOMOは、AIブーム特有の新たな現象というわけではありません。NISA投資家にとっては、1992年から2006年までの15年間にわたる市場サイクルの中で、不動産がどのようなパフォーマンスを示したのか理解することが重要だと考えています。この期間は、テクノロジー・バブルの形成、その崩壊、そして回復局面を含んでいます (図9)。現在のAI革命には、1990年代のドットコム・ブームを彷彿とさせる要素が見られ、足元では、米国上場不動産証券の相対的な出遅れや、マグニフィセント・セブンへの資金集中といった類似点が見られます。

図9
市場サイクル全体で見ると、REITはテクノロジー株との連動性が低い傾向

テック・バブル前後を通じた過去のリターン

1992年から1996年にかけて、グローバルREIT市場はグローバル株式市場をアウトパフォームしましたが、米国株式には僅かに劣後する結果となりました。その後、1997年から1999年にかけての「ニュー・エコノミー」と呼ばれるテクノロジー株の急騰期には、REITの勢いは失速しました。一方、Amazonや、日本では光通信といった新興インターネット企業の株価が急騰しました。

この時期、FOMOにより、米国の個人投資家の多くが、401kや個人退職口座(IRA)を通じて、テクノロジー関連の投資信託への投資をさらに積み増しました。インターネット株がこれほど好調であるなら、なぜREITを保有する必要があるのかーそう考える投資家も少なくありませんでした。

しかし、テクノロジー・バブルが崩壊し、株価が約50%下落した後、2000年から2006年にかけて、上場不動産証券は米国およびグローバル株式を大きく上回るパフォーマンスを示しました。それはなぜでしょうか。今日と同様に、不動産市場の動向は米国およびグローバル株式市場と必ずしも連動せず、不動産特有の需給動向に基づいて推移していたためです。この特性は、ポートフォリオ運用にとって有益な効果をもたらします。

この15年間の市場サイクルにおいて、株式ポートフォリオの中にREITへの配分を維持した投資家は、より安定した推移を経験し、2006年に株式市場がドットコム・バブル時の高値を回復した後も、より良好な結果を得ることができました。実際、グローバルREITに20%配分したポートフォリオは、グローバル株式のみのポートフォリオを100ベーシスポイント以上上回るパフォーマンスを記録し、最大ドローダウンも株式のみの場合よりも小さく抑えられました(株式のみ-46.8%に対し、-37.7%)。長期的な資産形成を実現するためには、直近の勝者に賭け続ける代わりに、REITを組み入れた、より分散され耐久性の高いポートフォリオを持つことが重要です。

株式中心のポートフォリオ内でREITへの配分を維持した投資家は、この15年間の市場サイクルにおいて、より安定した運用成果を経験し、2006年に株式市場がドットコム・バブル時の高値を回復した後も、より良好な結果を得ることができました。
レポートをダ‍ウ‍ン‍ロ‍ー‍ド
著者について
Mathew Kirschner, CFA マシュー・カーシュナーは、シニア・バイス・プレジデントで、米国不動産証券戦略のポートフォリオ・マネージャー。2004年に入社する以前は、アライアンス・バーンスタインで商品リサーチおよび開発を担当するアナリストとして従事。エモリー大学にて学士号を取得し、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスにてMBA(金融・会計専攻)を取得。ニューヨーク拠点。
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