実物不動産が底打ちするなか、実物商業用不動産に勝機

 
  • 実物不動産は2024年第3四半期に底入れしたのち、回復基調が続き、4四半期連続でプラスのトータル・リターンを維持しています。
  • 2024年も実物不動産の価格調整は継続しましたが、当社はある特定の不動産セクターが最初に底打ちしたと判断しました。それは、需要が旺盛で供給が極端に限られている、生活必需品を扱う屋外型ショッピングセンターです。
  • 最近の一部の小売業者の破産に関する報道が市場の注目を集める一方、実際には、優良なテナントが質の高い物件を確保するために、これらの物件をより高い賃料で引き継ぐ好機となっています。

1) 実物不動産のサイクル

当社が、昨年初めに予測した不動産サイクルの好機は、今まさに現実となりつつあります。上場リートが実物不動産市場における下落と回復の両局面で先行指標となるという当社の見解が、今回の局面で改めて裏付けられています。

当社は、実物不動産は上場リートに約1年遅れて底入れすると予測していましたが、実際に上場リートは2023年10月に底を打ち、その約1年後に実物不動産もセクター平均で回復の兆しを見せています(図表1)。

NCREIF ODCE指数は2022年末から7四半期連続でマイナスのトータル・リターンを示していましたが、2024年第3四半期に小幅ながらプラスのトータル・リターンを記録して以降、4半期連続でプラス圏を維持しています。

図1
NFI-ODCE指数は2024年4-6月期に底入れした可能性が高い

全米不動産投資受託者協会(NCREIF)が公表する、NFI-ODCE指数の2022年7-9月期(新型コロナウイルス・ピーク後)からの四半期リターン(ネット)の推移(1)

2) 屋外型ショッピングセンター

これは、当社が今月(本動画収録時点の2025年9月現在)注目している2つ目のポイントにもつながります。2024年も実物不動産の価格調整は継続していたなか、実物不動産のセクター別パフォーマンス比較では、生活必需品を扱う屋外型ショッピングセンターが他のセクターに先駆けて回復の兆しを示しました。

生活必需品を扱う屋外型ショッピングセンター(NCREIFでは「ストリップセンター」に分類)は、堅調な需要と極端な供給不足を背景に、高い入居率と安定した賃料成長を実現し、過去2年半にわたり、他の物件セクターを上回るパフォーマンスを示しています(図表2)。

図2
実物不動産のセクター別パフォーマンスのパターン - ODCE指数、レバレッジなし


これにより、当社の見解通り、前回のサイクルで好調であった集合住宅や産業施設に代わり、魅力的なバリュエーションと需給環境の改善を背景に、ショッピングセンターなどの出遅れセクターが回復局面に入ると考えています。

約10年前に「小売業の終焉」という話題がニュースの見出しを席巻していた状況とは一変し、現在では新たなショッピングセンターの建設ペースは、主要な不動産タイプのなかで依然として最も低い水準に留まっています。小売売上高が年率3%の安定した成長を続ける一方、店舗の増加率(店舗面積ベース)は10年以上にわたり1%未満と低水準が続いています。

同時に、ウォルマートやターゲットなど、柔軟で経営力の高い小売業者は足もと非常に好調であり、実店舗型小売業の中心である食料品店は、倉庫型流通の影響を受けない堅固な市場であることが示されています。

その結果、屋外型ショッピングセンターは、主要な不動産セクターの中でも賃料成長が加速している唯一のサブセクターとして、投資家にとって魅力的な投資機会を提供しています。

3) 物件需要と賃料成長

最後に、Joann’やParty City、The Container Store、TGI Friday’sといった最近の小売業者の破産報道が注目を集めるなか、投資家から寄せられる質問について取り上げたいと思います。

将来のテナント候補の閉店は、実物商業用不動産全体の需要鈍化を示すものではなく、むしろ、足もとの物件稼働率が90%台と極めて高水準であることを背景に、新たな機会が生まれています。既存テナントを入れ替えることで、賃料の引き上げや物件の信用力向上につながります。さらに、先述の需給バランスの観点から、成長を続ける小売業者にとって、高成長エリアの質の高い物件は選択肢が限られており、閉店によって生じる空きスペースは、こうした優良テナントを誘致するための貴重な機会と捉えられます。

実際、財務基盤が強固なテナントは、質の高い物件を確保するため、破産したテナントの退去後の物件をより高い賃料で引き継ぐ傾向があります。こうした動きは、実物不動産市場の新しいサイクルにおいて、資本を効果的に投じる絶好のチャンスを生み出しています。

レポートをダ‍‍ウ‍‍ン‍ロ‍‍ー‍‍ド
著者について
James Corl ジェームズ・コールはエグゼクティブ・バイス・プレジデントで実物不動産戦略統括責任者。かつてコーヘン&スティアーズに11年在籍し、2004年から2008年までは不動産担当チーフ・インベストメント・オフィサーを務める。2020年に再び入社。直近では、シギュラー・ガフ&カンパニー社で、不動産統括責任者として、実物不動産市場に特化した不動産投資グループのリーダーを務める。それ以前は、ハイトマン・キャピタル・マネジメント社およびクレディスイス・ファースト・ボストン社で不動産投資業務に携わる。スタンフォード大学より学士号、ペンシルバニア大学よりMBAを取得。ニューヨーク拠点。
4768646