プライベート・クレジット市場の歪みを背景に、資産配分は二つの代替投資にシフト

プライベート・クレジ‍ッ‍ト市‍場の歪‍みを背‍景に、資‍産‍配‍分は二‍つの代‍替投‍資にシ‍フ‍ト

プライベート・クレジ‍ッ‍ト市‍場の歪‍みを背‍景に、資‍産‍配‍分は二‍つの代‍替投‍資にシ‍フ‍ト

注目すべき二つの資産クラス:ハイブリッド証券と実物不動産

プライベート・クレジット市場は、現在その規模が3兆米ドルを超え、2009年比で約10倍に拡大していますが、足元ではいくつかの歪みが表面化し始めています。

融資基準の低下、流動性の制約、融資期限延長や条件変更に加え、注目度の高い複数のデフォルト事例が確認されており、投資家の間では、これらが市場全体の先行指標(いわゆる「炭鉱のカナリア」)となる可能性が懸念されています。

また、プライベート・クレジット市場において、主要ファンドの一つが純資産価値(NAV)を19%引き下げたほか、プライベート・クレジット融資のおよそ10件に1件が、利息の支払いを元本に繰り延べるPIK(Payment-in-Kind)によって返済されていると推計されています。さらに、昨年第4四半期には、投資家によるプライベート・クレジット・ファンドへの償還請求が増加しました。

プライベート・クレジットのトータル・リターンが低下するなか、投資家の間では、価格調整が進んだ、あるいは利回り水準が正常化した他の資産クラスとの相対比較を踏まえ、当該資産クラスの投資妙味およびリスク・リターンの妥当性を再評価する動きが見られます。

当社は、税効率の高いインカム収益やトータル・リターンの獲得を目的とする投資家にとって、ハイブリッド証券および実物不動産が、足元の市場サイクルにおいて有効な投資対象であると考えています。

ハイブリッド証券は、債券投資において十分に活用されていない資産クラスであるものの、信用力の高い発行体への投資を通じて、相対的に高いインカム収益、良好なリスク調整後リターン、並びにポートフォリオ分散の拡充が期待されます。2025年には、同資産クラスは債券クラス内で最も高いパフォーマンスを示しており、足元では投資適格格付の発行体から6~7%の利回り水準が提供されています。

プライベート・クレジットが依然として高金利環境への調整局面にある一方で、商業用不動産価格は回復の兆しを見せ始めています。実物不動産市場の底打ちは、長期的に安定したインカム収益、資本価値の向上、税効率を提供してきた資産クラスへの魅力的な投資機会を形成しており、相対的に他の資産クラスの魅力度が低下する局面において、その投資妙味は一段と高まっていると考えられます。

世界金融危機(GFC)後の環境下において、プライベート・クレジットは、供給面および需要面双方からの構造的な追い風を受け、持続的な拡大を遂げてきました。

GFC後の超低金利環境は、高利回り資産への旺盛な需要を生み出しました。一方、GFC後の規制強化により、銀行は貸出姿勢を硬化させ、融資を抑制しました。その結果、規模、リスク、構造面で銀行や他の貸し手にとって適合しない案件において、プライベート・クレジットが迅速かつ相対的に柔軟な引受基準を通じて、貸出の供給ギャップを埋める役割を果たしてきました。

しかし、足元では市場環境が変化しています。2022年~2023年にかけて実施された10回の利上げを経て、国債や投資適格社債、ハイ・イールド債、ハイブリッド証券といった伝統的な債券資産では利回り水準が正常化しました。その一方で、クレジット・スプレッドは全体的に縮小していますが、とりわけプライベート・クレジットでは、限られた案件に対して資金流入が続くなか、上場市場との競合の激化も相まり、スプレッドのタイト化が顕著となっています。

その結果、リスクが高まっている状況にもかかわらず、クレジット・スプレッドは一段と縮小しています。

The Wall Street Journal (WSJ) によれば、主要プライベート・クレジット・ファンドにおける2025年最初の9ヶ月間のトータル・リターンは平均6.2%にとどまり、2024年および2023年の同期間に記録した8.8%、11.4%から低下しました。

また、プライベート・クレジットを巡る警戒感を示す報道や発言が相次いでいます。Jamie Dimon氏(JPモルガン、CEO)は「1匹のゴキブリを見かけたら、他にも潜んでいる可能性が高い」と警鐘を鳴らし、WSJは「プライベート・クレジットの宴が暗転」と報じています。また、CNBCは「ウォール街はプライベート・クレジットのメルトダウンに備えている」と伝えています。

一部のメディアは過度に警戒的である可能性があるものの、これらの見出しは、実際の市場動向に基づいています。特に、プライベート・クレジットはパブリック・クレジットに代わる安定的かつ高利回りの投資手段として位置づけられてきただけに、同資産クラスに対する懸念が生じることは、投資家の信認に影響を及ぼす可能性があります。

プライベート・クレジットは、足元の規模において、完全な市場サイクルを通じた実証がなされておらず、その耐性については慎重な見極めが必要と考えられています。

リスクの上昇とスプレッドの縮小が進むなか、プライベート・クレジットからの資金流出は拡大しています。また、個人投資家向けの新たな投資形態を通じてプライベート・クレジットの裾野が拡大することで、同資産クラスの資金は従来ほど定着しにくくなる可能性があります。

機関投資家は、これまで低流動なファンドを通じてクレジット投資を行ってきたため、比較的安定した資金基盤が形成されてきました。一方、個人投資家は、ネガティブな報道に直面すると資金を引き上げる傾向があります。こうした資金流出が継続すれば、当該ファンドが直面する運営面での課題は一段と深刻化すると考えられます。

ハイブリッド証券は、投資適格債とハイ・イールド債の中間的な特性を有しています。ハイ・イールド債に匹敵するリターンを提供しつつ、銀行、保険会社、ディフェンシブな公益事業といった規制産業かつ投資適格の格付けを有する発行体による発行が中心であることから、ボラティリティは相対的に抑えられてきました。

米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ局面を継続するなか、ハイブリッド証券は、信用力とデュレーション、並びに相対的に高い利回りを兼ね備えた債券への需要回復の恩恵を受けると見込まれます。また、ハイブリッド証券の配当は、(主に一部の投資家にとって)税制上の優遇を受けるケースが多く、実質リターンの押し上げが期待されます(図1)。

ハイブリッド証券の発行体は、銀行や保険会社といった高度に規制された金融機関に加え、公益事業、パイプライン、リートなど、キャッシュフローの安定性と透明性が高い事業体に集中しています。

ハイブリッド証券は、完全な市場サイクルを通じて実証された資産クラスであり、その耐性は過去のデータによって裏付けられています。S&P Globalによる過去40年にわたる分析では、世界の金融サービス企業が発行するBBB/BB+格付の証券(ハイブリッド証券の典型的な格付および主要な発行体)が、歴史的に1%未満と極めて低いデフォルト率にとどまっていることが示されています。

図1
債券クラス内で最高水準の利回りを示すハイブリッド証券

債券クラス別の税引前・税引後利回り

ハイブリッド証券の最大の発行体である銀行は、過去に例を見ないほど良好な財務状況にあります。2025年には、安定した収益成長を背景に自己資本が記録的な水準に達しており、当社は、これが将来の貸倒損失に対する緩衝材となるだけでなく、セクター全体の信用力を押し上げる要因になると考えています。

ハイブリッド証券は、株式および他の債券クラスに対して相対的に低い相関を示しており、株式と債券の相関が高まる現在の市場環境において、有効な分散効果が期待されます。銀行や保険会社といったハイブリッド証券の主要発行体が、ハイ・イールド債などの債券戦略に十分に組み入れられていないことが、同資産クラスの分散特性を高める一因と考えられます。

実物不動産価格は底打ち

実物不動産は、高金利環境および資本コストの上昇が既に価格に織り込まれており、2022年に始まった利上げ局面とともに、ピークからボトムまで約20%下落しました。これは、同様の環境変化が十分に価格へ反映されていないプライベート・クレジットやプライベート・エクイティと対照的です。

NCREIF-ODCE指数で測定した米国の実物不動産は、2022年末以降に7四半期連続でマイナス・リターンを記録した後、足元では5四半期連続でプラス・リターンを記録しています。これは、市場が底打ちから回復局面へ移行しつつあることを示唆しています。

同時に、建設資材および労働コストのインフレに加え、借入コストの上昇が新規供給の抑制要因となっています。供給制約が強まるなか、既存物件の賃料成長は加速する可能性があり、こうしたインカム収益は、プレイベート・クレジットに内在するリスクを懸念する投資家にとって、相対的に魅力的な代替投資になると考えられます。

価格調整の完了、需給環境の改善、並びにその他資産クラスと比較した際の商業用不動産の相対的な優位性は、足元の環境下で特に魅力的です。当社は、こうした状況が、実物不動産へ長期的に資産を配分するためのまたとない魅力的な投資機会を提供していると考えています。

実物不動産と上場不動産証券の組み合わせて保有することは、ポートフォリオの分散効果を高め、シャープ・レシオの改善に寄与すると考えられます。足元では、より魅力的なバリュエーションとインフレ感応度の高さに加え、REITに係る税制、パス・スルー型の減価償却によるみなし元本変換、さらには相続税面での潜在的なメリットを通じて、税効率の高い、高水準のインカム収益を得る機会を提供します(図2)。

実物不動産は、これまで株式や債券などの伝統資産との相関が低く、分散効果を発揮してきました。株式・債券のバリュエーションが高水準にある現在、投資家がポートフォリオ分散を重視する局面において、その意義は一段と高まっています。

図2
税制上のメリットが期待される、安定したインカム収益

過去10年間の平均配当利回り(a)

レポートをダ‍ウ‍ン‍ロ‍ー‍ド
著者について
Joseph Harvey ジョセフ・ハーベイは、コーヘン&スティアーズのCEOで、当社と当社のミューチュアル・ファンドの役員を務める。1992年にリートのアナリストとして入社して以来、1998年から2016年まではポートフォリオ・マネージャーとして、2003年から2019年まではチーフ・インベストメント・オフィサーとして、また、2003年から2024年までは社長として従事。入社する以前は、ロバート・A・スタンジャーでバイス・プレジデントとして務め、その間、調査およびコンサルティング活動の一環として不動産証券と石油ガスを専門とするアナリストとして従事した経験を持つ。プリンストン大学にて経済学士号を取得。ニューヨーク拠点。
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