非上場リートの解約制限について投資家が知っておくべきこと

非上場リートの解約制限についておくべきこと

非上場リートの解約制限についておくべきこと

最近の不動産投資に関する市場動向は、当社の想定の範囲内

  • 過去数週間にかけて、いくつかの代表的な非上場リート(以下、NTR : Non-Traded REIT)において、資金流入が減少し、解約請求が急増したため、規約に基づいて解約請求額を月次ベースで純資産価値の2%、四半期ベースで純資産価値の5%に制限されました。
  • 上記のような解約制限はNTRの特徴の一つであり、運用会社が保有する大量の不動産を、投げ売り価格で清算しなければならない事態を防ぐためのものです。NTRは、通常、市場にストレスがかかった状態にあるときや流動性が低下している時期を含め、比較的長期間にわたって投資を継続できる経済的に余裕のある投資家のみを対象としています。
  • この度の解約請求とそれに伴う運用会社の動向は、実物不動産のバリュエーション、NTRの仕組み、市場の期待等について、金融関連の報道を専門に扱うメディアの間で議論を呼び起こしました。
  • こうした動きが、不動産市場、特に不動産投資家に対して広範な経済的またはシステミック・リスクを反映するものであるとは考えていません。当社の見解では、不動産業界は、これまで大きな投機や過度なレバレッジ、融資等がみられるような経済分野ではなかったと考えます。特にNTRが商業用不動産市場の1%に過ぎないことを考慮すると、不動産ファンドが解約に対応するために、無秩序な払戻しやパニック的な売却を行うようなシナリオに陥る可能性は低いと見ています。
  • また、NTRの保有ポートフォリオに代表されるコア・セクターにもストレスの兆候は見られません。
  • 上場・実物不動産を問わず、投資家の行動や最近のパフォーマンスは、歴史的な前例に根ざしている部分があると考えます。

実物不動産と上場不動産証券の2022年のパフォーマンスは大きく乖離

  • 経済成長鈍化と資金調達コスト上昇という環境下で、2022年に上場リート市場では大幅な価格調整が行われました。上場リート市場は、2022年11月末時点で年初来で-21.0%の下落となりました(FTSE Nareit エクイティ・リート指数で計測)。
  • 実物不動産は、価格決定および取引のプロセスやスピードが上場市場と比較して緩慢なため、一般的に上場不動産証券の価格トレンドに遅行する傾向があり、未だ価格調整が進んでいません。2022年9月30日までの実物不動産(NCREIF ODCE 指数、四半期毎に計測)の年初来のトータル・リターンは13%の上昇となりました。
  • このようなバリュエーションの乖離は正常であると考えます。歴史的に見ても、景気の転換期において、上場不動産証券のバリュエーションが調整される一方で、実物不動産のバリュエーションは、その変化を完全に反映するのに一定の時間を要してきました。
  • 現在、景気後退期に入っているか否かについては議論が続いています。しかし、当社の予想以上に、市場は深刻な景気後退を織り込んでいると考えます。このような背景から、今回の景気後退局面は、過去の景気後退に類似した展開を見せる可能性があると見ています。上場リートは歴史的に、景気後退の後に顕著に良好なパフォーマンスを発揮してきました。
  • 今回のNTRに対する一連の解約は、相対的なバリュエーションに基づき、投資家が2022年に好調なパフォーマンスを発揮した実物不動産からリバランスしようとする意思決定を反映したものであると考えます。これは、株式、債券、上場不動産証券等の流動性の高い資産クラスが下落していることが背景にあります。
  • さらに、実物不動産は価格決定のスピードが遅く、一般的に上場不動産に遅行するため、投資家は実物不動産投資に対して、目先においてより厳しい環境を想定している可能性があります。この上場不動産に対する実物不動産のパフォーマンスの遅れは、当社の経験では1~2四半期から長ければ1~2年かかることもあります。このような傾向は、足元のような景気後退期には特に顕著に現れます。
  • 当社の実物不動産運用チームは、実物不動産投資が、レバレッジなしベースで今後10~20%の範囲で下落すると予想しています。
  • 一方、上場リートは全体として、概ね価格調整済みであり、限定的な新規供給および健全なキャッシュフローを背景に、優位な立ち位置にあると考えています。

現在の市場環境は、上場リートへの投資の魅力的なエントリー・ポイント

  • 当社は、投資家に対して、実物および上場不動産の両方に戦略的に資産配分することを助言してきました。よって二者択一を勧めているわけではなく、当社の分析では、実物および上場不動産の間でポートフォリオを最適化することで、ボラティリティを抑えながら、より力強いリターンを実現することが可能であると考えます。
  • 上場市場と実物市場の先行・遅行の動きを理解することにより、不動産投資家は2つの資産クラスに異なるタイミングで資産を配分することができます。
  • 現在の市場環境では、実物不動産よりも上場リートをオーバーウエイトすべきであると考えています。異なる環境下においては、実物不動産のオーバーウエイトが適切となる場合がありますが、今後12ヶ月にかけては、上場リートのパフォーマンスを後押しする市場環境へと移行すると見ています。
  • 高い物件稼働率等のデータが示すように、不動産の需給は逼迫しています。景気後退の可能性を反映してリートの収益は減速することが予想されますが、上場リートが生み出すキャッシュフローは、特に他の資産クラスと比較して、相対的に底堅いと見ています。
  • 上場不動産証券は歴史的に、我々が現在直面しているようなインフレが高止まりする環境においてアウトパフォームしてきた実績があります。それは、実質金利と経済成長率がともに低下する時期であり、利上げサイクルの終盤でもあります。
  • 上場リートは歴史的に、景気後退後のパフォーマンスが顕著に高い傾向があります。米国リートは、景気後退期に投資した場合でも、その後の12ヶ月間で平均10.8%のトータル・リターンを実現しています。また、景気サイクルの初期(景気回復期)に投資を開始した場合、その後の12ヶ月間で平均20.4%という優れたリターンを創出しています。
  • 米国実物不動産投資は、景気後退後の12ヶ月間で平均11.8%下落しています。この過去の実績は、今後、実物不動産が価格調整されると予想する当社の見解と一致しています。
  • 2022年9月30日の最終評価時点における実物不動産のインプライド・キャップレートは3.7%に過ぎないのに対し、上場リートは同時点で5.8%でした。このことは、実物不動産に相応な価格調整が起こることを示唆していると考えます(キャップレートとは、不動産物件から得られる期待収益率です)。
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