クレディスイスを巡る市場動向
クレディスイスを巡る市場動向
背景
世界の銀行システム全体に対する危険な信頼低下を食い止めたいと考える規制当局が後押しする形で、スイス最大の銀行であるUBS はクレディ・スイス・グループ(以下、CS)の買収に合意しました。同買収は全株式取引であり、買収額はCS の時価総額である80億ドル(3 月10日終値時点)を大幅に下回る額となりました。この取引の一環として、スイス国立銀行(SNB)は、UBSに対して1,000億ドルの流動性供給枠を提供することに合意しました。スイス政府によるこの度の特別支援は、CSの合計170億スイスフラン相当の追加型Tier1債券(AT1債 – CoCo債としても知られる)の完全無価値化を引き起こすトリガーとなりました。
CoCo債は、2008年の世界金融危機を受けて、米国以外の政策立案者によって、政府資金による金融機関の救済の必要性を低減するために考案されました。同証券は、銀行が資本要件を満たすのを助けると同時に、株式よりも魅力的な発行コストで株式類似資本を提供するものであり、現在、グローバルのハイブリッド証券ユニバース内の約4 分の1をCoCo債が占めています。
CoCo債は、企業の資本構成において劣後性を有し、資本が一定水準を下回った場合は株式への転換や元本削減が可能な証券であることから、その対価としてグローバルの債券クラスの中でも最も高い利回りを実現しています。
CSのCoCo債(および一般的に全てのスイスの銀行のCoCo債)は、普通株式への転換や一時的な元本削減を認めない条件(永久元本削減型)となっており、やや特殊な条件で発行されています。CS の資本水準、流動性、資産の質はともに高い水準にありましたが、預金者の銀行に対する信頼感の低下に起因する預金流出の加速によりCSの流動性危機が引き起こされたため、スイスおよび世界の銀行への潜在的な損害を防ぐ観点から、当局が介入する展開となりました。
CSに対する政府による特別な支援は、同行の追加型Tier1債券の完全無価値化を引き起こすトリガーに
コーヘン&スティアーズのCSへのエクスポージャーと投資行動
CSの経営上の課題や再建計画の実行リスク等への懸念から、2022 年10 月頃から足もとにかけて同行へのエクスポージャーを大きく削減して参りました(2022 年10 月1日から2023 年3月17日までの期間で、全ポートフォリオの投資額が60%以上削減されました)。
2022年12 月31日時点では、Cohen & Steers SICAV Global Preferred SecuritiesファンドにおけるCS のAT1(CoCo)債はポートフォリオ全体に対して1.8% でしたが、2023 年3 月17 日時点では0.3% となりました(同ファンドおよび当社の運用する米国籍ミューチュアルファンドを含む全ファンドにおけるCS のAT1(CoCo)債の保有比率は、2022 年12 月31日時点では1.3% ~ 2.3% のレンジ内、2023 年3 月17 日時点では0.2% ~ 0.5% のレンジ内)。
当資料は、投資一委任業務の認可を受けている運用会社およびそのアドバイザーのみに提供しております。当資料はマーケティング活動におけるコミュニケーションを目的としています。最終的な投資決定を行う前に、コーヘン& スティアーズSICAV の目論見書および主要投資家情報書類(KIID)をご参照ください。
広範な欧州の銀行セクターへの影響
欧州の銀行セクターのファンダメンタルズは依然として健全であり、CSのケースは個社要因であったと考えます。欧州の銀行は、一律に適用される厳格な規制により、米国の銀行と比較して自己資本比率や流動性カバレッジ比率が高い水準にあります。
この度のCS の危機は、近年の不祥事や訴訟問題、運用資産の流出に伴う収益性の急低下等、一連の不手際を経て、預金者の不信感が高まったことにより発生しました(直近では、同行の財務報告に関して監査法人から内部統制の脆弱性を指摘されたことも明らかとなりました)。
欧州の規制当局はその後、AT1保有者が株式保有者よりも先に損失を吸収する結果となったCSの今般の事象は特殊であったことを声明にて認めています。欧州中央銀行(ECB)銀行監督委員会、単一破綻処理委員会(SRB)、欧州銀行監督機構(EBA)は連名で、「最初に普通株式で損失を吸収した後、初めて追加Tier1債券の評価減が求められる」という確立されたフレームワークに基づき、今後の行動は導かれるものとの声明を発表しています。また、イングランド銀行も同様の声明を発表しました。
しかしながら、当社は、流動性に脆弱性がないか等含め、全ての企業を注意深くモニターし、必要に応じてエクスポージャーの削減を検討する方針です。また、この度のAT1(CoCo)債全額無価値化の報道を受けて、当面はCoCo 債とシニア/劣後債間の信用スプレッド差が拡大すると見ており、CoCo 債市場のパフォーマンスには圧力がかかると予想しています。
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ハイブリッド証券への投資に関するリスク:分散投資は利益を保証したり、損失から保護するものではありません。あらゆる市場への投資にリスクが伴います。一般的に、ハイブリッド証券への投資リスクは、信用リスクや金利リスクなど、債券への投資と同様です。また、ほぼすべてのハイブリッド証券には発行体のコールオプションがあるため、コールリスクと再投資リスクも重要な考慮事項です。さらに、投資家は、配当やクーポンの繰り延べや省略、社債やより上位の債務への劣後、議決権の制限による高い企業統治リスクなど、株式と同様のリスクに直面します。ハイブリッド証券ファンドは、投資適格以下の証券およびアドバイザーが投資適格以下と判断した未格付け証券に投資することがあります。投資適格以下の証券または同等の未格付け証券は、一般に、価格の変動が大きく、収入と元本の損失リスクを伴い、高格付け証券よりも現実または認識される経済や競争産業の悪条件の影響を受けやすい場合があります。ハイブリッド証券のリスクは、他の投資と異なります。倒産した場合の弁済順位は企業のハイブリッド証券は普通株式より上位に位置しますが、他のすべての種類の企業債務より下位に位置します。社債は資本構造上、ハイブリッド証券よりも上位に位置するため、倒産した場合もハイブリッド証券よりも上位に位置することになります。地方債は、州政府および地方政府機関によって発行され、裏付けされています。地方債の利息は、州および地方の所得税が免除されることが一般的です。米国財務省証券は米国政府によって発行され、元本および利息の適時支払に対する米国政府の全面的な信用に裏打ちされているため、一般にすべての債券の中で最も安全であると考えられています。
CoCo 債への投資に関するリスク:CoCo債は、発行体の自己資本比率が一定水準を下回った場合など、特定の状況下で発行体の普通株式に強制的に転換されるなど、損失吸収特性が証券条件に組み込まれた証券です。発行体の普通株式は配当を支払わない可能性があるため、これらの商品の投資家は所得率が低下しゼロになる可能性があり、転換することで投資家の劣後性が深まり、倒産した場合の投資家の立場が悪化する可能性があります。CoCo債の中には、そのような状況下で証券の価値または元本を減少させることを規定しているものもあります。また、ほとんどのCoCo債は高利回り証券とみなされるため、投資適格以下の証券に投資するリスクを伴います。
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