イランを巡る紛争によるエネルギー価格の急騰とリアルアセットへの示唆

イランを巡る紛争によるエネルギー価‍格の急‍騰とリ‍ア‍ル‍ア‍セ‍ッ‍トへの示‍唆

イランを巡る紛争によるエネルギー価‍格の急‍騰とリ‍ア‍ル‍ア‍セ‍ッ‍トへの示‍唆

エネルギー価格の乱高下は不確実性をもたらすものの、リアルアセットは底堅さを維持する可能性が高い

背景

足もと、イランを巡る緊張が高まっており、その影響で中東地域のエネルギー供給や、世界全体のエネルギー供給網に混乱が生じています。特に、原油や液化天然ガス(LNG)などを運ぶ重要な航路であるホルムズ海峡ではタンカーの通行が制限され、エネルギーの供給に不安が出ています。

こうした状況を受けて、主要な産油国は、万が一の事態に備えた予防的な生産調整を実施しています。また、貯蔵能力や輸送面でも制約が出ており、需給の先行きが見通しにくくなっています。

現時点では、情勢は非常に流動的で、当面は不透明な状況が続く可能性があります。

2026年もグローバル経済は成長すると予想される一方、米国以外の地域では下振れリスクが高まっている

現時点における市場の反応

原油価格は大きく変動しています。実際には、一時1バレル120ドルに達した後、わずか48時間で80ドルまで下落しており、供給面での混乱に加えて、地政学的リスクが急激に高まっていることを反映しています。天然ガス価格についても、特に欧州とアジアにおいて、LNG関連施設の操業停止や在庫の逼迫を背景に、価格が乱高下しています。

エネルギー以外の市場では、原油価格の上昇に連動する格好で国債利回りが上昇しています。これは、インフレ再燃への懸念が強まり、短期的な金融緩和期待が後退していることを示しています。歴史的に見て、エネルギー価格の上昇はまずインフレ率に迅速に反映され、長引いた場合にはコア・インフレ率や金利見通しにも影響を及ぼす可能性があります。

為替市場では、安全資産としての需要を背景に米ドルが堅調に推移しています。一方で、エネルギー価格上昇の影響を受けやすい航空株などが売られ、欧州や日本などエネルギー輸入依存度の高い地域において株式市場も相対的に軟調です。ただし、株式指数全体で見ると底堅さは維持されています。3月10日時点で、S&P500種指数は年初来で0.7%の下落にとどまっていますし、FTSE100種指数は4.8%の上昇となっています。

今後の見通し

短期的には、エネルギー価格の上昇を背景にインフレ率が一時的に高まる可能性が高いと見ています。ただし、エネルギー価格が落ち着けば、その影響は徐々に和らぐと考えられます。なお、2026年については、当社ではもともとインフレが市場の想定より粘着的となる可能性を予想していました。経済成長については、2026年も全体としては底堅い成長環境が続くと予想していますが、米国以外では下振れリスクが相対的に大きいと見ています。特に、今回の緊張状態が長引いた場合、その影響は無視できません。ただし、トランプ政権が紛争の長期化を望んでいるとは考えていません。一方、当面は市場のボラティリティが高まり、需給の歪みや誤った価格形成が生じやすい局面が続く可能性があると見ています。

生産能力への深刻なダメージや主要輸送ルートの長期閉鎖が起きない限り、供給側の対応や需要調整が進み、価格は徐々に安定していくと予想されます。時間の経過とともにリスク・プレミアムは低下し、エネルギー価格は本来の需給環境に沿った水準に戻っていくと考えられます。

短期的には、今回の情勢を受けてコモディティや資源関連株が押し上げられる可能性があります。一方で、インフレが長引き、成長が鈍化するリスクが高まると、グローバル市場全体が不安定になりやすくなります。その場合、公益セクターなどの相対的にディフェンシブな分野が選好されやすくなるでしょう。

想定される主なリスク

想定される最大のリスクは、ホルムズ海峡を通る海上輸送が長期間にわたって制限されることです。そうなれば、原油価格はさらに上昇し、世界のサプライチェーンに大きな負担がかかる可能性があります。

また、エネルギー価格の高騰が持続すれば、特にエネルギー輸入への依存度が高い地域では、需要が落ち込むリスクが高まります。歴史的に見て、エネルギー価格の上昇が続くと、経済成長が鈍化し、インフレ圧力が強まり、金融政策の判断も難しくなる傾向があります。景気後退に陥る可能性は高くないと見ていますが、仮にそうなった場合には、多くのリスク資産に下押し圧力がかかることになります。

世界経済へ及ぼし得る影響

エネルギー価格の上昇は、実質的な購買力を低下させ、企業の利益率を圧迫します。特に、輸入エネルギーへの依存度が高い欧州やアジアの一部地域では、その影響がより顕著となります。

米国は、エネルギーの純生産国であるため、相対的には影響を受けにくいものの、ガソリン代や光熱費の上昇は消費者心理や個人消費に少なからず影響を与える可能性があります。こうした状況が長引けば、世界的にスタグフレーションのリスクが高まります。

また、エネルギー価格の変動が大きくなることで、インフレ率が高止まりする可能性が高まり、中央銀行が積極的に金融緩和を行いにくくなります。政策当局は短期的な供給ショックは一時的なものとして見過ごす傾向にあるものの、エネルギー価格の上昇がコア・インフレやインフレ期待に波及する場合には、リスクが一段と高まります。

その結果、国債利回りは原油価格の動きに対して感応度を高めており、エネルギー価格の高いボラティリティが続く場合、金融環境はさらに引き締まりやすくなると考えられます。

当社が運用する各戦略内におけるポジショニング

足もとの情勢や市場のボラティリティ上昇を受けて、リアルアセットの各戦略では受け得る影響や投資機会に違いが生じています。当社の運用する各戦略では、エネルギー価格上昇による短期的な追い風を取り込みながらも、インフレの長期化や成長鈍化が広範なリスク資産全体に与え得る中長期的な影響を注視しています。同時に、市場の過度な反応によって生じる価格の歪みを投資機会として活用していく方針です。

  • 天然資源株:高まる地政学的リスクとエネルギー価格の上昇は、特にエネルギー関連株にとって追い風となっています。原油価格や欧州の天然ガス価格の上昇に直接影響を受ける石油生産企業や関連企業が恩恵を受けていますが、一方で、インフレ圧力が需要を大幅に減退させるようなより深刻な事態に発展した場合には、下振れリスクも意識する必要があります。
  • エネルギー:原油関連企業は価格上昇の恩恵を受けている一方、天然ガス市場、特に米国外ではLNG供給リスクを背景に価格変動がより大きくなっています。米国からのLNG輸出に直接関わる企業は、輸入エネルギーへの依存度が高い欧州の需要を背景に、相対的に恩恵を受けやすい立場にあります。
  • 金属・鉱業:貴金属は、地政学的な不確実性に対する部分的なヘッジ手段として機能していますが、長期金利の上昇や米ドル高が短期的なパフォーマンスを抑える要因となっています。また、アルミニウムなどの一部の工業用金属は、エネルギー集約型の生産構造を持つため、地域ごとの供給リスクや電力コストの影響を受けやすい状況です。イラン情勢に限らず、最近の地政学的インベントは、鉱物資源が政治的・経済的な安定にとって極めて重要であることを改めて示しています。
  • グローバル上場インフラ株:この資産クラスは歴史的に高いディフェンシブ性を発揮してきました。ミッドストリーム・エネルギーや公益事業などの、料金ベースや規制下の事業モデルを有する企業は、コスト上昇を料金に転嫁できる仕組みを備えており、安定したキャッシュフローが期待できます。特にミッドストリーム資産は、長期契約に基づく収益体系により、コモディティ価格の変動の影響を受けにくい傾向があります。一方で、港湾や空港などの輸送インフラは、貿易の混乱や経済活動の減速の影響を受けやすく、相対的にリスクが高まります。
  • 不動産証券:REITは成長が緩やかで且つマクロ不確実性が高い環境下で優位性を発揮する傾向があります。安定した事業モデルを持ち、グローバルな貿易フローへの依存度が低いため、底堅いパフォーマンスを発揮すると見ています。ただし、紛争が長期化してスタグフレーション懸念が強まる場合には、成長の鈍化や利下げ期待の後退が他の市場と同様に主なリスクとなります。
  • リアル・アセット・マルチ:当社では、天然資源株とグローバル上場インフラ株をオーバーウエイトとしています。いずれも、比較的しっかりした成長見通しがあり、相対的な投資妙味が高いと考えています。一方、コモディティ先物については、これまでの価格上昇を踏まえたバリュエーション面の懸念からアンダーウエイトを維持しています。また、スタグフレーション・リスクを考慮し、不動産証券に対しては小幅なアンダーウエイトとする一方で、ポートフォリオにおいて短期デュレーション債券を小幅にオーバーウエイトしており、全体としてリスクに対してより慎重なスタンスを反映しています。
レポートをダ‍ウ‍ン‍ロ‍ー‍ド
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