年初来における上場不動産証券の良好なパフォーマンスの要因

 
  • 上場リートは年初来2月末までに5%超のリターンを記録し、1995年以降で8番目の好スタートを切りました。
  • この5年間で初めて、上場リートは年初来2ヵ月間でS&P 500種指数をアウトパフォームし、業種全体では4番目の好パフォーマンスとなりました。
  • 実質金利の低下が上場リートの支援材料となっていますが、過去の分析では、上場リートは「FRBの政策金利据え置き」局面でポジティブなパフォーマンスを記録しています。

上場リートの絶対パフォーマンス、広範な株式市場に対する相対パフォーマンス、ポジティブなリターンの要因。コーヘン&スティアーズの不動産シリーズへようこそ。

1. 上場リートの年初来のリターンは5%超

今月は、2025年1~2月の上場リートのパフォーマンスについて解説します。

まず、上場リートの年初来のリターンは、2月末時点で5%を超えています。

これは、一見すると比較的低調に見えるかもしれませんが、下図に示すように、1995年以降で8番目に良いスタートを切っています。

図1
今年の上場リートは1995年以降で8番目の好スタート

1995年以降のFTSE NAREITエクイティ・リート指数の年初から2月末までのリターン

しかし、順風満帆というわけではありません。実質金利の上昇を受けて年初の10日間で4%近く下落しました。しかし、上場リートはそれ以来、2月末までに10%近く上昇しました。

上場REITの18のサブ・セクターのうち13のサブ・セクターが年初来でプラスのリターンを創出しており、産業施設は14.7%、ヘルスケアは14%上昇しています。

これに対し、ホテル/リゾートはおよそ8%の下落と出遅れ、データセンターは6.8%下落しています。

2. 上場リートがS&P 500種指数をアウトパフォーム

第二に、より印象的な点として、上場リートが年初来でS&P 500種指数を345bps、NASDAQを681bpsアウトパフォームしていることです。

年初の2ヵ月間で上場リートがS&P 500種指数を上回ったのは5年ぶりであり、これは2014年以降で最も高い相対パフォーマンスとなります。下図に示すように、S&P 500種指数の11セクターのうち、不動産の2月末時点の年初来のパフォーマンスは4番目に高くなっています。

図2
不動産はS&P 500種指数の11業種セクターで4番目に高いパフォーマンスを記録

2月末までの年初来

これは、2021年末以降の状況とは対照的です。この間、不動産はS&P 500種指数における11業種の中でパフォーマンス最下位となり、トータル・リターンは-7%と、唯一下落した業種となりました。

一方、S&P 500種指数は2021年末以降31%以上上昇し、エネルギーは83%近く、情報技術は48%以上上昇しています。

情報技術や一般消費財・サービスなど、昨年の大きく選好された業種の多くが年初から出遅れていることも注目されます。

3. 上場リートの上昇要因

最後に、上場リートの価格の上昇要因は何か、ということについて考察したいと思います。

その簡単な答えは、実質金利が昨年末からおよそ33bps低下し、1月10日以降ではおよそ41bps低下していることです。

しかし、さらに2つの要因が存在すると考えられます。

第一に、市場はインフレよりも成長に注目するようになっています。これが長期金利の低下を促し、不動産、生活必需品、ヘルスケア、公益企業といったディフェンシブ・セクターに対する需要を高めています。

実際、当社は以前から、上場リートの魅力のひとつである配当利回りは現在4%に近く、一桁台半ばから後半の安定的な収益成長が見込まれると主張してきました。

第二に、2024年9月の前回の利下げ以降、FRBは政策金利を据え置いています。

これは重要な点です。FRBが利下げ後に金利を据え置いた過去の事例を分析すると、下図に示されているように、その間に上場リートは高水準のリターンを生み出していることが分かります。

図3
平均すると、FRBの政策金利据え置き局面では上場リートは堅調に推移

FRBの金利据え置き局面における上場リートの12ヵ月先(NTM)リターンは平均するとプラス19%で、マイナス7%からプラス39%の範囲でした。

12ヵ月先リターンがマイナスとなったのは、1998年11月~1999年5月(-7%)の1期間のみでした。しかし、FRBが金利を据え置いていた7ヵ月間に、上場リートはプラス5.3%のリターンを達成しました。リターンがマイナスに転じたのは、FRBが1999年6月に利上げに踏み切ってからでした。

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著者について
Brian Cordes, CAIA
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