ハイブリッド証券への投資妙味
ハイブリッド証券への投資妙味
ハイブリッド証券は、投資適格社債を上回り、ハイ・イールド債に匹敵する魅力的な長期的リターンを提供し得るほか、分散効果が期待でき、また、発行体のクレジットの質が一般的に高いというメリットがあります。
要 旨
- ハイブリッド証券は、2022年を通じての価格調整を経て、利上げサイクルが終焉を迎えつつある現在、投資妙味が高まっていると考えます。
- ハイブリッド証券は、その相対的に高いインカム水準によって、歴史的に、投資適格社債を上回る優れた長期的リターンを提供してきました。
- ハイ・イールド債の高いデフォルト率は、より高格付のハイブリッド証券市場に対するハイ・イールド債券の相対的なインカム水準の優位性をほぼ相殺します。
足元の市場環境においてハイブリッド証券は魅力的な投資先
昨年にかけての主に金利上昇を背景とした市場の調整を経て、多くの債券クラスにおいて魅力的な投資機会が出現していると考えます。各国の中央銀行が今後さらに政策金利を引き上げる可能性はある一方、イールドカーブには一定程度の追加金融引き締めが既に織り込まれています。また、インフレは現時点では依然として高水準にあるものの、低下傾向にあります。先進国の利上げサイクルは今後数ヶ月で終了する可能性が高く、過去の経験に基づき、目先の市場環境は債券市場の高いトータル・リターンの可能性を示しているといえます(図1)。
債券クラスへの配分を検討するうえで、ハイブリッド証券は大きな優位性を有すると考えています。ハイブリッド証券は、高いクレジットの質(ハイブリッド証券市場において大部分は投資適格以上の格付)に加え、一般的に投資適格社債を大きく上回る水準のインカムを提供することができます。これらの特性は、ハイブリッド証券の長期にわたる相対的に魅力的なトータル・リターン創出の支えとなってきました。また、ハイブリッド証券は、他の債券資産との相関が低いほか、シクリカル性の低い事業へのエクスポージャーを相対的に大きく持つことから、分散投資効果も期待できます。さらに、ほとんどのハイブリッド証券は、クーポンのリセット構造を備えており、金利上昇による価格下落リスクが抑えられています。
米ドル建て投資適格ハイブリッド証券は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルの終了後から1年間の平均リターンが14.2%、2年間平均では年率8.2%のリターンを記録しており、歴史的に利上げサイクル終了後に非常に力強いパフォーマンスを示してきました。また、1990年以降の利上げサイクル終了後、ハイブリッド証券が他の債券クラスをアウトパフォームする傾向が観測されています。
図1
ハイブリッド証券は利上げサイクルの終了後に力強いパフォーマンスを発揮
利上げ後の1年平均利回りとトータル・リターン(%)
ハイブリッド証券は、歴史的に、投資適格社債対比高い利回りと
優れた長期的リターンを提供
ハイブリッド証券(資本証券または優先証券とも呼ばれる)は、一般的に株式または劣後債の一形態ですが、額面価格に対して予め決められたクーポンを支払うため、他の債券クラスと同様の動きをする傾向があります。しかし、ハイブリッド証券は、企業の資本構造上、シニア債や従来型の劣後債よりも弁済順位が下位に位置するため、企業倒産時には不利となり、ストレス状況下でクーポン利息や配当の支払いが滞る可能性があります。このためハイブリッド証券は、同じ発行体の上位債券よりも信用度が低くなってはいますが、実際にはハイブリッド証券を発行するほとんどの発行体は財務体質が強固であるため、同資産クラスの大部分は投資適格の格付を有します。
弁済順位の劣後性を補うために、ハイブリッド証券は、通常、同じ発行者によるシニア債よりもはるかに高いクーポン利率を支払うように設計されています。ハイブリッド証券が提供する「劣後プレミアム」は、市場環境、発行体、クレジットの質、証券構造等の要因によって水準が異なります。クレジットの質が高いハイブリッド証券のインカム率は、同じ発行体のシニア債と比較して150~200ベーシスポイント高い(投資適格未満のハイブリッド証券の場合は、通常、200ベーシスポイント以上高い)のが一般的です。投資適格ハイブリッド証券の投資適格社債に対する長期的なスプレッドは190ベーシスポイントとなっています(1)。この上乗せされたインカムが、歴史的にハイブリッド証券の高い相対リターンを牽引してきました(図2)。
足元の期間においては、ハイブリッド証券の良好な相対リターンは、その高いインカム率と、ほとんどのハイブリッド証券が提供するクーポンのリセット構造に由来する平均デュレーションの相対的な短さの両方によって支えられてきました。しかしながら、長期的(5-10年)には、債券のトータルリターンは、主にインカム再投資を含むインカムおよびデフォルト率に左右されてきました。
図2
ハイブリッド証券は他の債券クラスを頻繁にアウトパフォーム
債券クラス別トータル・リターン(%)
足元の市場環境においてハイブリッド証券は魅力的な投資先
高いインカム水準は債券のリターンの大きな寄与要因である一方、それだけでは全てを語ることはできません。例えば、過去10年間、米国のハイ・イールド債は、投資適格のハイブリッド証券と比較し、年間125-175ベーシスポイント多くインカムを支払ってきました。しかし、図2が示すように、両者の長期的なリターン・プロファイルにそれほど大きな差はありません。
これは、主にハイ・イールド債のデフォルト率が長期的に有意に高いことに起因しています。ハイ・イールド債は、主に景気変動に敏感なシクリカル型セクター(エネルギー、素材、メディア、小売など)や、レバレッジ比率の高い企業によって発行されています。2000年以降、ハイ・イールド債のデフォルト率は年平均で4%を超え、時にはそれを大きく上回ることもありました(図3)。
ハイブリッド証券市場においては、ほとんどの証券が投資適格の格付を受けており、その非常に低い長期デフォルト率は、同資産クラスの高いクレジットの質を反映しています。では、ハイブリッド証券のクレジットの質を高める要因となっているのは何でしょうか。ハイブリッド証券は弁済順位に劣後性があることから、市場環境がストレスを受けた時期にはクーポン利息や配当の支払いが延期されたり、スキップされることがあります。それゆえ、投資家はハイブリッド証券の発行体には特に安定したビジネスモデルを求めます。ハイブリッド証券は主に、銀行や保険会社などの規制の厳しい優良企業や、電力会社などの安定的で予測可能なキャッシュフローを提供する企業によって発行されており、これらのセクターは概して、債券のデフォルト率が歴史的に低いセクターとなっています(1)。
ハイ・イールド債のデフォルトからの回収率(額面金額に対する元本および経過利子の回収率)は、ばらつきがあるものの、通常40%程度であり、長期的には年間リターンの約2.5%の純減につながります。事実上、ハイ・イールド債の典型的なデフォルト・サイクルは、高いクーポン支払いを受けた年月を帳消しにしかねないため、その歴史的リターンは結局、投資家がハイブリッド証券から得るものと同等となるのです。
投資家は、相対的に高クオリティ、低ボラティリティの特徴を有するハイブリッド証券への投資によってハイ・イールド債と同等のリターンを得ることができます。
図3
通常の景気循環に伴うデフォルトがハイ・イールド債のインカム利回りを相殺
米国における過去の12ヵ月間のデフォルト率(%)
アルファの創出とリスク管理
固定利付証券、固定クーポンから変動クーポンに切り替わるタイプの証券、そして変動利付証券等を含む、ハイブリッド証券市場においてみられる多様な証券構造は、特に同市場に関して深い知見を有するアクティブ・マネージャーが投資家に潜在的な価値を付加する機会を創出します。ハイブリッド証券の証券構造上の複雑さと同証券市場の継続的な進化は、グローバルな市場環境の変化の中で、当資産クラスに精通したマネージャーが超過収益を生み出し、金利および信用リスクを効果的に管理する機会を提供し得ると考えます。
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指数定義/ 重要な開示事項
投資家は当資料に記載された指数に直接投資することはできません。指数の実績は手数料や諸経費等を控除したものではありません。ボラティリティやその他の特性が特定の投資とは異なるため、指数の比較には制約があります。
米ドル建てOTC ハイブリッド証券:ICE BofA US IG Institutional Capital Securities Index は、ICE BofA US Corporate Index のサブセットで、固定金利から変動金利、永久コール可能証券、資本証券を含む米国市場で発行された米ドル建てOTC 市場のハイブリッド証券のパフォーマンスを計測。
米ドル建て上場ハイブリッド証券:ICE BofA Fixed Rate Preferred Securities Index は、米国市場で発行された米ドル建ての固定金利証券のパフォーマンスを計測。
CoCo 債:2016 年12 月31 日まではICE BofA Contingent Capital Index、それ以降はBloomberg Developed Market USD Contingent Capital Index。ICEBofA Contingent Capital Index は、米国およびユーロ債市場で公募された米ドル建ての投資適格および投資適格以下のコンティンジェント・キャピタル証券で、最終満期までの残存期間が1ヶ月以上、発行時点で満期まで18 ヶ月以上のもののパフォーマンスを計測。Bloomberg Developed Market USD Contingent Capital Index は、発行体の規制資本比率やその他の明示的なソルベンシー・ベースのトリガーに基づく明示的な株式転換または評価損吸収メカニズムを持つ先進国市場のハイブリッド証券のパフォーマンスを計測。
米国社債:ICE BofA Corporate Master Index は、米国市場で発行された米ドル建ての投資適格社債のパフォーマンスを継続。
米国地方債:ICE BofA Municipal Master Index は、米国の州、準州およびその政治的下部組織が米国市場で公的に発行する米ドル建ての投資適格非課税債券のパフォーマンスを計測。
米国ハイ・イールド債:ICE BofA High Yield Master Index ( 格付: B+) は、米国市場で発行された米ドル建ての投資適格未満の社債のパフォーマンスを計測。
米国10 債:The 10-year Treasury note は、米国政府が発行する10 年満期の国債。
グローバル社債:ICE BofA Global Corporate Index は、主要な債券市場で発行された投資適格社債のパフォーマンスを計測。
グローバル・ハイ・イールド債:ICE BofA Global High Yield Index は、主要な債券市場で発行された投資適格未満の社債のパフォーマンスを計測。
過去の実績は将来の投資収益や運用成果を保証するものではありません。本資料に記載された見解や意見は発表日現在のものであり、予告なしに変更されることがあります。また、本資料に記載された市場予測が実現することを保証するものではありません。本資料は、特定の時点での市場環境に関するものであり、投資アドバイスとして依拠すべきではありません。また、特定の証券や投資の売買を推奨するものではなく、いかなる投資のパフォーマンスも予測または描写するものではありません。
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ハイブリッド証券への投資に関するリスク:ハイブリッド証券戦略への投資は、投資した元本全額を失う可能性があるなど、投資リスクを伴います。これらの有価証券の価値は、他の投資と同様に、急激かつ予測不可能に大きく変動する可能性があります。当社のハイブリッド証券戦略は、投資適格未満の有価証券およびアドバイザーが投資適格未満と判断した未格付け有価証券に投資する場合があります。投資不適格証券または同等の未格付け証券は一般的に、高格付けの証券に比べ、価格の変動が大きく、元本を割り込むリスクがあり、また、経済や競合する業界の現実または事実上の悪条件の影響をより受けやすい可能性があります。当戦略のベンチマークには、投資適格未満の有価証券は含まれていません。
デュレーションリスク:デュレーションとは、固定利付証券またはハイブリッド証券の平均残存期間を数学的に計算したもので、金利(または利回り)の変動に対する証券の価格リスクの指標となります。デュレーションの長い証券は、デュレーションの短い証券に比べて、金利(または利回り)の変動に対してより敏感に反応する傾向があります。デュレーションは、満期までの期間に加え、金利の潜在的な変化、および証券のクーポン支払い、利回り、価格、額面、コール機能などを考慮する点で満期とは異なります。ファンドのデュレーションを調整するためには、様々な手法が用いられることがあります。有価証券のデュレーションは、市場要因や満期までの時間の変化により、時間の経過とともに変化することが予想されます。
コーヘン&スティアーズ・ジャパン株式会社は、投資運用業及び投資助言・代理業者として関東財務局に登録されています。(関東財務局長(金商)第3157 号)