新たな経済パラダイムにおけるインフラ投資
新たな経済パラダイムにおけるインフラ投資
2023年以降、持続的なインフレ、世界的な経済成長の鈍化、および市場のボラティリティ上昇が予想される環境下、上場インフラ株式に特化したアロケーションの重要性が高まっています
要 旨
- 上場インフラ株式は、インフレ環境下でも歴史的に過去平均以上のリターンを実現してきました。
- 不透明なマクロ環境下、インフラ資産の魅力に対する投資家の意欲は引き続き高いものと思われます。
- 新たな経済パラダイム下の課題によって、景気回復に伴う伝統的なリスク資産の急速な回復が妨げられる可能性があります。
インフレは鈍化しているが引き続き高い水準で推移すると想定
2022年のインフレおよび金利ショックの困難な時期を経て、世界経済は転換期を迎えています。昨年秋にピークアウトしたインフレ率は、さらに低下すると予想されます。しかし、年率2%以下の物価上昇率というパンデミック前の状況にすぐに戻るとは考えにくい状況です。インフレ率は粘着性を維持する可能性が高く、米国では、賃金上昇圧力やグローバル化の進展によるコスト上昇などの要因により、連邦準備制度理事会(FRB)が示唆する2%の目標に2024年末までに戻ることはないかもしれません。一方、インフラ資産の料金体系に組み込まれているインフレ・プロテクションの仕組みは、当該資産クラスを引き続き下支えするものと思われます。
歴史的に上場インフラ株式は、インフレ率が高水準でありながら低下傾向にある今日のような局面で、過去平均を上回るリターンを生み出してきました(図1)。1973年以降、インフレ率が過去のトレンドを上回っていたものの上昇が落ち着いた局面で、当該資産クラスの1年間の平均実質リターンは9.9%となっています。これは、50年間の調査期間全体における長期平均7.6%を2.3%ポイント上回る年間実質リターンです。
過去2年間、エコノミストの多くが一貫してインフレを過小評価してきました。世界が今回経験したのと同様に、過去に予想外のインフレが生じた時(第二次世界大戦後や1970年代など)には、インフレが封じ込められたと見られた後も相当のボラティリティがありました。当社は、このような過去の環境と、現在向かっている環境は相関すると考えており、インフレを予測する上で将来的に困難が生じる可能性を示唆していると考えています。そして、それはポートフォリオのインフレヘッジとして、上場インフラ株式へ資産を配分する意義を際立たせています。
図1
インフラ資産のリターンは、インフレ率が高いものの鈍化する環境下で、過去平均リターンを上回る
インフラ資産の平均年間実質リターン(1973年1月~2023年3月)
*CPIは米消費者物価指数
足元のマクロ環境は、インフラの特性への旺盛な需要継続を示唆
このところ、経済の方向性について活発な議論が交わされています。信用収縮と最近の銀行危機の影響がシステム全体に作用することで、2023年にリセッションが起こる可能性があります。そして、経済成長に対してはダウンサイドのリスクが見込まれます。
中央銀行は、依然として高いインフレ率と金融セクターの不安定性とのバランスを取らなければいけない難しい立場にあります。金融市場の安定化のために、更なる金融引き締めを控えることは、インフレ圧力を一層悪化させる可能性があります。一方、特に最近の銀行危機の根本的な原因がイールドカーブの大きな逆転に起因することから、インフレ抑制のために利上げを継続することは、金融市場のストレスをさらに増大させる恐れがあります。状況をさらに複雑にしているのは、銀行が融資基準を厳格化していることです。これは通常、成長率の鈍化(特に設備投資や新規建設など、最も金利の影響を受けやすい経済分野)と雇用の減少を招きます。
図2
料金体系とボリュームによって予測可能なインフラ資産のキャッシュフロー
インフラ資産のサブセクターごとの収益ドライバー
リセッションの深さや長さにかかわらず、当社は、インフラ資産に対する投資家の需要は引き続き高いと予想しています。これは、インフラサービスの需要が非弾力的であることや、企業のキャッシュフローがかなり安定していることなど、インフラという資産クラスが一般的にディフェンシブな特徴を持つため、株式市場全体と比較してボラティリティが低いことが一因です(図2)。
新たな経済パラダイム下の課題が伝統資産の急反発を妨げる可能性
インフラ資産は、景気循環の4つの局面のうち3つの局面において、歴史的に広範なグローバル株式市場をアウトパフォームしてきました(図3)。当社のリサーチは、全米経済研究所(NBER)が報告する景気後退期と、コンファレンスボードの複合指標(Coincident Indicators)に基づく景気拡大期の分類を前提としています。インフラ資産は、景気の過熱(サイクル後期)、後退(リセッション)、それに続く回復(サイクル初期)を特徴とする期間において、広範な株式市場をアウトパフォームしてきました。
NBERは2022年にリセッションを宣言しませんでしたが、2022年には2四半期連続のマイナス成長、イールドカーブの急な反転、株価の顕著な下落など、リセッションのいくつかの特徴が見られました。銀行危機によって足元の景気後退期はより深いものになるかもしれません。
当社は、高インフレの定着や名目金利の上昇などを含む、新たな経済パラダイムにおける課題によって、景気回復初期に見られるような経済活動の急速な加速が妨げられる可能性があると考えています。例えば、現在の経済システムにはほとんど余裕がないため、企業収益が急激に回復する可能性は低いと思われます。
そのため、伝統的なリスク資産で典型的にみられるV字回復が起こらない可能性があります。また、株式のバリュエーションはほとんどの市場において割安ではなく適正水準であり、構造的な高インフレとボラティリティの増大により、リスクプレミアムは高止まりし、株式の値上がりが抑制される可能性があります。このような状況下、安定したキャッシュフローと魅力的なインカム創出能力を持つインフラ資産が投資家に支持され、広範な株式市場をアウトパフォームする可能性があります。
図3
歴史的に上場インフラ株式は、景気サイクルの4局面のうち3局面でアウトパフォーム。
グローバル株式とのリターンの比較(%)
1973年–2022年
指数定義/重要な開示事項
投資家は当資料に記載された指数に直接投資することはできません。指数の実績は手数料や諸経費等を控除したものではありません。ボラティリティやその他の特性が特定の投資とは異なるため、指数の比較には制約があります。
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グローバル・インフラ株式: データストリーム・ワールド・インデックスシリーズは、リフィニティブ・データストリームが作成した、各セクター( 公益事業、鉄道、輸送サービス、パイプライン(エネルギー・ミッドストリーム)、旅行・観光) に属する企業の時価総額加重型のフリーフロート調整済みの世界および地域別指数です。電気、ガス、水道は公益事業のサブセクターです。電気通信は1998 年以降、AMT、CCI、SBAC、SESG からなるカスタム資本加重指数で表されます。これらのセクターレベルの指数は、FTSE グローバルコア・インフラストラクチャー50/50 トータル・リターン指数 (FGCIICUT) よりも長く、1973 年まで遡って連続した指数を分析することができます。世界の上場インフラの総合的なパフォーマンスは、時価総額加重のセクター別指数で表されます。FGCIICUT は2006 年の創設以来、1 ヶ月間のトータル・リターンで96.4%の相関があります。
グローバル株式: リフィニティブ・データストリーム・グローバル株式指数は、世界中の浮動株式のパフォーマンスをトラックするための幅広い市場ベンチマークとして機能するように設計された、フリーフロート調整済みの時価総額加重型指数です。
グローバル・インフラ証券の投資リスク: グローバル・インフラ証券への投資は、グローバル・インフラ企業を主たる対象としない投資より、グローバル・インフラ企業に影響を与える経済の悪化や規制強化による影響を受けやすいと予想されます。インフラ企業は、様々な政府当局による規制の対象となる可能性があり、顧客に課す料金に対する政府の規制、業務上またはその他の災害、関税、税法、規制方針および会計基準の変更から影響を受ける可能性もあります。
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