上場インフラ株式:再び高まる投資家の注目度

上場インフラ株式:再び高まる投資家の注目度

上場インフラ株式:再び高まる投資家の注目度

  • 2024年の世界の経済成長率は鈍化する可能性が高いなか、相対的に安定的なキャッシュフローを生み出すインフラ資産の魅力度が高まっています。
  • 上場インフラ株式は広範なグローバル株式と比較し、非常に魅力的なバリュエーションで取引されています。
  • 現在、バリュエーション水準およびキャッシュフロー動向に基づき、当社は通信塔およびミッドストリーム・セクターを選好しています。

今後の見通し:広範な株式市場をアウトパフォームする可能性

上場インフラ株式市場は、現在のバリュエーションおよび今後のマクロ経済見通しを踏まえると、同資産クラスにとって有利な環境を迎える可能性が高いと当社は考えています。足元の魅力的な相対バリュエーションは、底堅い業績見通しにも関わらず、インフラ株式市場のパフォーマンスは2023年にわずか2.2%の上昇となり、グローバル株式市場の23.8%に対して顕著に出遅れたことに起因しています

当社のマクロ経済見通しは、インフラ株式市場にとって有利な内容となっています。2024年、世界の経済成長率は一段と鈍化すると見込まれます。政策金利は、市場がよりハト派的なセンチメントへ移行しているものの、高い水準を維持する可能性が高く、またインフレ率は低下するものの、過去のトレンドを上回る水準で推移する可能性が高いと考えています。インフレ耐性、価格決定力および/または価格転嫁力を備えたディフェンシブな事業特性を有するインフラ企業は、景気サイクル後期やリセッション期に相対的に恩恵を受ける傾向があることから、今後想定されるマクロ環境は、通常、インフラ株式にとって好ましい環境といえます。

2024年は、上場インフラ株式にとってより好ましいマクロ環境および魅力的なバリュエーションが、同資産クラスに対する前向きな市場センチメントを促進する可能性があります。

図1で示唆されるように、2024年のマクロ環境は、インフラ株式にとってより良い環境となる可能性があります。

図1
様々なマクロ環境におけるインフラ株式の相対パフォーマンス

MSCIワールド指数に対する実質トータル・リターン(1979年~2023年)


2023年9月30日現在。出所:コーヘン&スティアーズ独自の分析。フィラデルフィア連銀専門予測家調査(SPF)の実質GDP予測中央値、およびミシガン大学消費者調査の12ヵ月前の予想値との比較。
引用されたデータは過去の実績であり、将来の結果を保証するものではありません。上記の情報は、コーヘン&スティアーズが運用またはサービスを提供するファンドまたはその他の口座のパフォーマンスを反映するものではなく、投資家が上記のようなパフォーマンスを経験することを保証するものではありません。上記に示された過去の傾向が将来も繰り返される保証はなく、そのような傾向がいつ始まるかを正確に予測する方法はありません。指数の関連性、定義、追加開示については巻末注をご参照ください。

バリュエーションに関しては、2023年の相対的なアンダーパフォーマンスの影響もあり、上場インフラ株式はグローバル株式と比較し、今日、非常に割安な水準となっています。例えば、企業価値対キャッシュフロー倍率ベースで見た場合(図2、右側)、上場インフラ株式はグローバル株式に対し、歴史的には平均してプレミアムの水準で取引されてきたのに対して、足元で割安な水準で取引されています。当社は、インフラ株式のEBITDA(キャッシュフロー)が相対的に予測可能性が高いこと、また、それに関連し、インフラ企業が提供するサービスには景気サイクルを通じて一貫した需要があることから、広範な株式市場対比でプレミアム水準で取引されることは正当であると考えています。過去長期平均プレミアムへの回帰は、インフラ株式が広範な株式市場に対してアウトパフォームする時期を迎えることを意味します。

図2
インフラ株式対グローバル株式 EV/EBITDA(1)

2010年12月~2023年12月

インフラ株式はグローバル株式より割安な水準で取引されている(2)

2010年12月~2023年12月


2023年12月31日現在。出所:MSCI、FTSE、ファクトセット、コーヘン&スティアーズ。
引用されたデータは過去の実績であり、将来の結果を保証するものではありません。上記の情報は、コーヘン&スティアーズが運用またはサービスを提供するファンドまたはその他の口座のパフォーマンスを反映するものではなく、投資家が上記のようなパフォーマンスを経験することを保証するものではありません。上記に示された過去の傾向が将来も繰り返される保証はなく、そのような傾向がいつ発生するかを正確に予測する方法はありません。

(1)EV/EBITDAは、当年度予想による利払い・税引き・減価償却・償却前利益に対する企業価値の比率。スプレッドとは、インフラ株式とグローバル株式のEV/EBITDA倍率の相対的な差を指しています。インフラ株式は、2015年3月31日まではUBS Global 50/50 Infrastructure & Utilities指数、それ以降はFTSE Global Core Infrastructure 50/50 指数を使用しています。グローバル株式はMSCI World指数を使用しています。(2) 平均は、2010年12月31日から入手可能な直近の月末データまでの月次データに基づくヒストリカル平均を示しています。指数の関連性、定義、追加の開示事項については巻末注をご参照ください。

今日のインフラ株式のバリュエーションには、長期金利上昇の影響が大きく反映されているように見受けられます。一方、広範な株式市場のインプライド収益成長率やマルチプルは、経済が弱含んで推移するなかで持続可能ではないように思われます。
今後数カ月間、広範な株式市場は調整する可能性がある一方、上場インフラ株式は、同資産クラスが持つディフェンシブ性とインフレ・ベータにより、たとえ長期金利が高止まりしたとしても、下支えされると当社は考えています。

過去2年を振り返ってみると、これまでの状況を説明するいくつかの背景が見えてきます。同資産クラスは、成長期待の鈍化、インフレ率の急上昇、長期金利の継続的な上昇により、金融市場にとっては非常に困難な時期であった2022年に広範な株式市場を大幅にアウトパフォームし、2023年を迎えました。

図3
過去2年間における上場インフラ株式のパフォーマンス

2013年12月31日現在


2023年12月31日現在。出所:コーヘン&スティアーズ、MSCI、FTSE。
上記のデータは過去の実績であり、将来の結果を保証するものではありません。記の情報は、コーヘン&スティアーズが運用またはサービスを提供するファンドまたはその他の口座のパフォーマンスを反映するものではなく、投資家が上記のようなパフォーマンスを経験することを保証するものではありません。上記に示された過去の傾向が将来も繰り返される保証はなく、そのような傾向がいつ始まるかを正確に予測する方法はありません。指数の関連性、定義、追加の開示事項については巻末注をご参照ください。

マクロ環境に逆風が吹くなか、必要不可欠なサービスを提供し、インフレに連動した価格決定メカニズムを持つ傾向があるインフラ企業の特性である比較的予測可能なキャッシュフローおよびプラスのインフレ感応度の重要性が浮彫となりました。その結果、図3に示すように、インフラ株式は、グローバル株式およびグローバル債券の両方を大幅にアウトパフォームしました。

ミッドストリーム・セクターは、インフレとの連動性が高く、コモディティ価格の間接的な影響を受ける傾向があるため、2022年に特に好調なパフォーマンスを発揮したセクターのひとつです。また、パンデミックを経た旅行需要の回復が最終段階に入り、空港や有料道路運営会社などの輸送関連企業のパフォーマンスも好調でした。

インフラ株式の2022年のアウトパフォーマンスは、下落相場における下値抵抗力を示唆しています。

新たな年を迎え、マクロ環境にいくつかの変化が起きています

2023年の上場インフラ株式のアンダーパフォーマンスを説明する上では、まずはマクロ環境の変化が挙げられます。世界経済の成長は鈍化を続けたものの、2023年通年では概ね市場予想を上回りました。このことは、インフレ率の低下と相まって、インフラ株式が持つディフェンシブ性の魅力度を低下させました。

上記に加え、2023年における上場インフラ株式の広範な株式に対する相対パフォーマンスの逆転は、以下に挙げる3つの要因にも起因しています。

  • テクノロジー・セクターへのエクスポージャーがないこと:2023年の株式市場の大きな追い風となったのは、一部の大手テクノロジー関連企業、特に、人工知能(AI)の拡大に関連する企業が上昇したことが挙げられます。MSCIワールド指数の約20%を占めるテクノロジー・セクターは、2023年に54%上昇しました。上場インフラ株式のユニバースにはテクノロジー企業は含まれていないため、同セクターの上昇の恩恵を受けることができませんでした。
  • 債券利回りの上昇:インフラ株式の投資家の中には、比較的高い配当利回りに魅力を感じている投資家も存在します。2023年は、過去10年来でも長期金利が最も顕著に上昇し、債券投資が高利回りの株式資産クラスに代わる有力な選択肢となりました。とはいえ、上場インフラ株式は「利回り+キャッシュフロー成長」が期待できることに対し、債券の配当は成長性を兼ね備えていません。
  • 資本コストの大幅な上昇:インフラ企業は資本集約的な事業モデルを有し、企業の資産基盤を維持・拡大するためには多額の投資が必要となります。多くのサブ・セクター(特に公益)は、企業成長に必要な資金を外部資本、つまり債券や株式の発行に依存しています。以下の図4は、サブ・セクターごとの金利感応度を示しています。
図4
金利感応度はサブセクターによって異なる可能性がある

2023年12月31日現在。出所:コーヘン&スティアーズ。
上図は例示のみを目的としたものであり、コーヘン&スティアーズが運用またはサービスを提供するファンドまたはその他の口座に関する情報を反映したものではありません。上記に例示された過去の傾向が将来も繰り返される保証はなく、そのような傾向がいつ始まるかを正確に予測する方法もありません。見解および意見は発表日現在のものであり、予告なしに変更されることがあります。特定のセクターについて言及することは、特定の証券の売買や保有を推奨または勧誘するものではなく、投資アドバイスとして依拠されるべきではありません。

インフラ事業の重要な特徴のひとつは、ほとんどの場合、高い資金調達コストを最終顧客に転嫁できるような価格設定メカニズムを持っていることです。ただし、規制プロセスの関係でこれにはタイムラグが生じる可能性があります。こうした価格転嫁の仕組みがあるにもかかわらず、2023年には、外部からの資金調達に依存する金利感応度の高い一部のセクター、特に公益セクターが見境なく売られました。第3四半期末の大幅下落は過剰であり、アクティブ運用会社にとって投資機会をもたらしていると当社は考えています。

通信塔もまた、資本コストの上昇が一因となり、アンダーパフォームしました。バリュエーションは魅力的な水準にあり、図5に示すように、株価キャッシュフロー倍率は過去6年間で最低の平均水準にあります。また、通信塔会社の収益成長は底打ちしたと見られます。

図5
通信塔のバリュエーションは2017年以降で最も魅力的な水準に

株価キャッシュフロー倍率に基づく平均バリュエーション(12カ月フォワード)


2023年11月30日現在。出所:コーヘン&スティアーズ。
上記に例示した過去の傾向が将来も繰り返される保証はなく、そのような傾向がいつ始まるかを正確に予測する方法もありません。本資料に記載された市場予測や投資目的が実現することを保証するものではありません。上記の見解および意見は予告なしに変更されることがあります。特定のセクターについて言及することは、特定の証券の売買や保有を推奨または勧誘するものではなく、投資アドバイスとして依拠すべきではありません。上記はコーヘン&スティアーズの分析と予想に基づきます。

これらの企業は、多くのインフラのサブ・セクターに見られるほどの価格決定力はないものの、長期的なファンダメンタルズについては前向きな見方を維持しています。通信塔会社は米国企業の年間賃料のエスカレーション(インフレに直接連動するものではない)、新たなコロケーション/高密度への需要、賃貸借契約条件の改正等を要因に、(最近では減速傾向であったものの)引き続き魅力的なオーガニック・グロース(有機的成長)の恩恵を受けると見ています。未だ米国の通信塔サイトは約半分しか5Gに対応していません。5Gの普及率が100%近くに達するまで、無線通信事業者は今後何年も投資を続けると予想されます。加えて、データ消費量は年率約20%と急成長を続けており、通信事業者はネットワークの高密度化が避けられない状況です。

また、良好なファンダメンタルズという点で、当社が注目するもうひとつのサブセクターは、ミッドストリームです。ミッドストリームはここ数年で変貌を遂げ、より魅力的なビジネスモデルが確立されました。2000年代前半は、ミッドストリーム企業は最小限のキャッシュフローしか生み出さず、成長のために負債や、場合によっては外部からのエクイティ・ファイナンスに依存していました。しかしバランスシートが拡大したことと積極的な配当方針によって、この5年間で同セクターは加速度的に変化することを余儀なくされました。ミッドストリーム企業は投資方針を厳格化し、配当の伸びを鈍化させ、バランスシートのレバレッジ解消に注力しました。

こうした動きは、ミッドストリーム企業のレバレッジ・レシオ(キャッシュフローに対する純有利子負債、以下図6)の着実な低下につながり、レバレッジは3~4倍の範囲に落ち着く一方、フリー・キャッシュ・フローは成長を続けています。これは、これらの企業にとって最適な資本配分アプローチであり、2024年以降もフリー・キャッシュ・フロー創出、自社株買い、配当成長の加速、買収機会の増大を可能にするはずであると考えています。

図6
米パイプライン企業はバランスシートを改善

2023年11月30日時点。 出所:コーヘン&スティアーズ。
上記に例示した過去の傾向が将来も繰り返される保証はなく、そのような傾向がいつ始まるかを正確に予測する方法もありません。本資料に記載された市場予測や投資目的が実現することを保証するものではありません。上記の見解および意見は予告なしに変更されることがあります。特定のセクターについて言及することは、特定の証券の売買や保有を推奨または勧誘するものではなく、投資アドバイスとして依拠すべきではありません。上記はコーヘン&スティアーズの分析と予想に基づきます。米国の大手パイプラインの株式会社10社を対象としています。

上場インフラ株式への長期的な資産配分がもたらす魅力

最後に、当社はグローバル上場インフラ株式への長期的な資産配分は魅力的であると考えます。同資産クラスは、株式に類似したリターンを提供してきたにもかかわらず、一般的に長期契約であることやインフラ事業が本質的に必要不可欠なサービスであるという性質により、収益のボラティリティが比較的低いことを背景に下値抵抗力をも発揮してきました。

レポートをダ⁠ウ⁠ン⁠ロ⁠ー⁠ド
著者について
headshot of Benjamin Morton
Benjamin Morton ベンジャミン・モートンは、エグゼクティブ・バイス・プレジデントで、当社グローバル・インフラ株式戦略の統括責任者兼シニア・ポートフォリオ・マネージャーとして従事。
3303942