通信塔の好調なパフォーマンスとそれを支えるユニークな要因

 
  • 実質金利の低下は、通信塔リートのパフォーマンスにとってポジティブ。
  • モバイルデータ需要が拡大している一方で通信塔の新規建設が限定的であるため、通信塔の需給動向は良好。
  • 通信塔は、広範なリートユニバースに対して、魅力的なバリュエーション水準で取引されています(価格FAD倍率ベースでユニバース全体平均1.8倍に対してマイナス3.3倍と大きく下回水準)。

最近の市場ボラティリティが高まる環境下でも、通信塔セクターは米国リートの中において年初来で最も良好なパフォーマンスを発揮。

通信塔リートは、無線通信ネットワーク・プロバイダーやその他の通信利用者にスペースを賃貸しています。関税措置導入の発表を受けて市場が下落した局面では、通信塔もリート市場全体に追随して下落となったものの、発表後4取引日で3.1%と比較的小幅な下落にとどまりました。それ以前は、2025年初来から3月の3か月間で、通信塔は16.4%上昇していました。

2022-2024年の3年間、どの年においても通信塔がマイナスのリターンとなっていたのとは対照的な結果であり、特に通信塔リートが19.7%の下落となった2024年10-12月期とは様相が大きく異なります。

通信塔は2024年の1年間で14.2%の下落となり、リートのサブセクターの中で下位第3位のパフォーマンスとなりました。しかし、2025年以降の今後の見通しは良好であると考えています。

通信塔リートの良好な見通しを後押ししているのは、次の3つのトレンドです。

1. 実質金利の低下は、通信塔リートにとってポジティブ

第一に、実質金利の低下が通信塔のパフォーマンスの追い風となる点が挙げられます。通信塔は他の不動産セクターに比べ金利環境の影響を受けやすい傾向があるため、金利が一定の高水準を長期に亘って維持するなか、パフォーマンスが低迷していました。

図1のチャートでご覧いただける通り、2022年1月から2023年10月にかけて実質金利は322ベーシスポイントを超えて上昇し、その期間の通信塔リートのリターンは-43%でした。しかし、実質金利が2023年末にピークに達し、低下に転じて以来、通信塔リートは今年3月までに23%のリターンを実現しています。

図1
実質⾦利の低下に伴い、通信塔リートのパフォーマンスは⼤幅に反転

現在、市場は今後1年間に少なくとも4回の利下げを織り込んでおり、通信塔リートにとって良好な金利環境が継続すると考えられます。

2. 通信塔リートの需給動向は良好

通信塔リートにとっての2つ目の追い風は、良好な需給動向です。

無線通信事業者各社は5Gへの投資を一時的に見送っていましたが、通信塔スペースの需要が復活してきています。ユーザーは、モバイルビデオやゲームなど、より高速でデータ使用量の多いアプリケーションを求めています。

最近リリースされたエリクソン・モビリティ・レポートによると、世界のモバイルデータ通信量は今後4年間で倍増すると推定されています。ちなみに、モバイルデータの利用量は2015年以降、毎年31%増加しています。

図2
供給が限られているなかで、モバイルデータ需要は増加基調

世界のモバイルデータ通信量予測 月間エクサバイト(1)

このような需要の高まりのなか、通信塔の新規建設をめぐるゾーニングの制限や一般住民の反対等から、通信塔は供給面の制約に直面しています。カリフォルニア州ブローリーからニューヨーク州サガポナックに至るまで、全米の地域社会は居住地近隣での通信塔新設に反対し、地域社会における通信塔の新規建設に抵抗しているからです。

3. 通信塔は、他のリートに比べてバリュエーションが魅力的です。

最後に、通信塔のバリュエーションに注目しています。2019年末以降、価格FAD倍率で測定すると、通信塔リートは広範なリートに対して平均して1.8倍のプレミアムで取引されてきましたが、2024年末時点では、3.3倍のディスカウントで取引されていました。

このチャートでご覧いただける通り、これは過去と比較しても大きなディスカウント水準となっています。当社では、現在のバリュエーションは、今日の通信塔の大きな成長機会を反映していないと考えています。

図3
通信塔リートのバリュエーションは、広範なリートユニバースに対して史上最大に近いディスカウント水準にあります。

当社は、目先の金利環境、需給の追い風、魅力的な相対バリュエーションに基づき、通信塔リートがアウトパフォームする可能性が高いと見ています。

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著者について
Alec Overby, CFA
Alec Overby, CFA
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