実物不動産の底入れを示唆する3つの兆候

 

実物不動産は、力強い回復の兆しを見せており、リターンの改善、融資基準の緩和、そして取引量の増加が確認されています。これらの要因は、今後数四半期にわたって実物不動産への資産配分に適した環境が整いつつあることを示唆しています。

  • NCREIF-ODCE指数で測定される実物不動産は、直近4四半期連続でプラスのリターンを記録しており、これは2022年の下落局面以降で最も力強い回復の兆候
  • 商業用不動産(CRE)の取得に関する融資基準は、不動産のバリュエーション水準やキャッシュフローの安定性に対する投資家の信頼感の高まりを反映し、足もとで緩和傾向にある。銀行は取得資金の融資に対して前向きな姿勢を示しており、供給の伸びが鈍化していることと相まって、既存物件にとって追い風となる環境が形成されている
  • 不動産取引量は前年比で5四半期連続で増加しており、取引量の持続的な成長期に入ったことを示唆

実物不動産のモメンタムは着実に改善に向かっています。融資基準は引き続き緩和傾向にあり、不動産取引量も明確に増加に向かっている兆候が確認されています。

今月は、実物不動産のサイクルおよび今後数四半期に向けた見通しに注目いたします。

コーヘン&スティアーズの不動産シリーズへようこそ。

まず最初に、実物不動産のリターンにおいて、持続的な回復の勢いが確認されています。NCREIF-ODCE指数で測定される実物不動産は、直近4四半期連続でプラスのリターンを記録しています。これは、2022年後半に始まった下落局面以降、最も力強い回復の兆候を示しています。

図1
NFI-ODCE指数は2024年4-6月期に底入れした可能性が高い

全米不動産投資受託者協会(NCREIF)が公表する、NFI-ODCE指数の2022年7-9月期(新型コロナウイルス・ピーク後)からの四半期リターン(ネット)の推移 (1)

この様にプラスのリターンが継続していることは、これが単なる一時的な反発ではなく、実物不動産のサイクルにおいて根本的な転換が起きていることを示唆しています。これは、「一度リターンがプラスに転じれば、その後もプラスが継続する」という当社が以前より示している見方と一致しています。

今月注目する2つ目のポイントは、商業用不動産(CRE)に対する融資基準です。

CREの融資環境は正常化に向けた前向きな兆しを見せています。

直近の数四半期においてCRE取得に関する融資基準は緩和されてきており、銀行およびその他の貸し手は、不動産のバリュエーション水準やキャッシュフローの安定性に対する投資家の信頼感の回復を反映し、融資に対してより積極的な姿勢を示しています。

図2
FRBによる融資基準に関する調査では、回答しした商業銀行の僅か2%が融資の厳格化を示唆

同時に、主要な不動産セクターの多くで供給の伸びが鈍化しています。投機的な建設プロジェクトへの融資に対しては、貸し手は依然として慎重な姿勢を維持しており、より高い自己資本の拠出とより厳格な事前リース契約の要件を求める傾向が強まっています。

物件取得に際しての融資条件の緩和と供給成長の鈍化が重なることにより、実物不動産にとってより優位な市場環境がもたらされます。

この結果、既存の不動産物件は、資本調達状況の改善および抑制された新規開発からの競争という両面の恩恵を受けることになります。

最後に我々が注目している3つ目のポイントとして、取引量の増加が挙げられ、これは実物不動産市場に資本が戻りつつあることを示す重要な証左となります。

図3
米国の商業用不動産の取引量

取引量の変化(前年比)

不動産取引量は前年比で5四半期連続で増加しており、市場の下落が始まって以来、最も持続的な活動成長の期間として確認されています。

これまで様子見をしていた機関投資家も、徐々に投資機会を見出し始めています。

妥当な水準のバリュエーション、金利見通しの改善、そして一部セクターにおける物件ファンダメンタルズの改善が重なり、資本が市場に戻りつつある状況が生まれています。

実物不動産市場の安定化を待っていた投資家にとって、これらの兆候は資本投入に適した環境への移行していることを示す強力な証拠となります。

著者について
Seth Laughlin
Seth Laughlin セス・ラフリンは、シニア・バイス・プレジデントで、不動産戦略・調査部門の責任者であり、上場不動産証券および実物不動産投資戦略における投資機会の特定や関連するテーマや戦略についての調査を統括。2025年に当社に入社する前は、グリーン・ストリート社で様々な役職を歴任し、直近では米国市場調査部門の統括責任者を務める。それ以前は、メリルリンチ社で機関投資家向けリートセクタースペシャリストを務め、ISI社ではリートアナリストとして従事。ノースカロライナ大学で学士号を取得。ニューヨーク拠点。
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