イスラエルとイランの紛争、原油市場および当社の見通し
イスラエルとイランの紛争、原油市場および当社の見通し
地政学的な不確実性は、短期的にボラティリティを引き起こす可能性は高いものの、ファンダメンタルズに基づく長期的な分析によって、これらの事象を通じて明確な方向性を提供することができると考えています。
これまでの動き
イスラエルは6月13日、イランの核施設および司令部を空爆して攻撃に踏み切ったのに続き、米国は週末にイランの核施設3ヶ所に奇襲空爆を行いました。米国の高官は、これらの攻撃は限定的な範囲に留まると示唆しましたが、米国による戦略的なエスカレーション、そしてイランによる報復宣言は、イスラエルとイランの紛争における極めて重要な転機となり、地政学的な不確実性が高まり、中東の原油供給途絶リスクに対する懸念が一段と高まるきっかけとなりました。6月23日月曜日に発表された停戦合意を受けて、緊張が和らぎ、紛争激化リスクは最小限に抑えられています。
これまでの市場の反応
イスラエルとイランの紛争激化により、原油相場は高騰し、当初のミサイル攻撃の応酬により原油価格は1バレルあたり10米ドル以上押し上げられました。しかし、イランによるカタール米軍基地への攻撃が象徴的な報復であり、エスカレーションの回避を目的に慎重に調整されたものと解釈されたため、月曜日(6月23日)遅くには、原油価格は6%下落しました。
今年の初めにリリースした「資本市場の見通し」に示したように、当社は、世界で地政学的な不確実性が高まることを予想していました。今回の紛争を含め、これらの事象は、短期的にボラティリティを上昇させる可能性があり、事態がさらに悪化するリスクは依然として存在するものの、ファンダメンタルズに基づく長期的な分析によって、これらの事象を通じて明確な方向性を提供することができると考えています。
従前の原油価格の見通しと、イスラエルと米国の攻撃の発生後における見方の変化
需給の観点から見ると、原油市場は、供給増と需要の低迷という状況を受けて、今年下半期は供給過剰に陥ると当社は予想しています。イスラエルによるイランへの攻撃が始まる前、ブレント原油は60米ドル台前半から半ばのレンジで推移していましたが、この価格帯は当社のファンダメンタル分析に整合していると考えています。米国の介入前の段階で、市場では地政学上のリスクプレミアムとして1バレル10米ドル以上の価格上昇が既に織り込まれていたとみられます。
当社の基本シナリオは、停戦を受けて市場はやや落ち着きを取り戻し、紛争が本格的に激化する状況には至らないと思われるものの、今後数週間は不確実性と原油価格のボラティリティが高まるものと想定しています。同地域からのエネルギー輸出が本質的に途絶するとは想定しておらず、原油価格はリスクプレミアムが時間の経過とともに剥落すれば、需給のファンダメンタルに沿った価格に戻ると予想しています。
とはいえ、状況は流動的であるとも認識しています。停戦合意が維持されている限り、緊張は確実に緩和されていくと考えます。ただし、イランとイスラエルの対応、そしてそれに対する米国の反応次第で大きく変化します。イランによるカタール米空軍基地へのミサイル攻撃は事前通告があったため、イランは、象徴的な武力の誇示を選択する一方で、緊張緩和と停戦への道筋を示す方針を採用したと当社は考えています。
しかし、これは激化の可能性のほんの一例に過ぎませんが、イランが域内のエネルギー・インフラに対して報復攻撃を行った場合、今後数週間から数ヵ月間にかけて原油および関連エネルギーの輸出が減少し、原油価格に一段と上昇圧力がかかることもあり得るとみられます。
さらに、今回の紛争によってホルムズ海峡が封鎖され、ペルシャ湾岸地域でより広範囲に資源の流れが危険にさらされるという、確率としては低い(もののはるかに極端な)リスクシナリオも認識しています。そうしたシナリオ下では、原油価格が1バレル100米ドルを突破する展開はありえないことではないと考えられます。しかし、現状、イスラエルがイランのガス・インフラを標的にしたことにより、タマル・リヴァイアサンガス田のガス生産は一時的に減少していることから、石油よりも天然ガスの供給に混乱が生じています。
世界経済を考慮する上でホルムズ海峡が非常に重要な理由
ホルムズ海峡は、世界で最も重要な海上交通路と言えるでしょう。ペルシャ湾とインド洋を結ぶホルムズ海峡で、世界の原油(ガスや石油化学製品を含む)の約20%が日々この海峡を通過しています。最も狭い部分の幅はわずか約20マイルで、北側はイランに接しています。
紛争が大幅に激化し、エネルギー輸出やホルムズ海峡を通過する輸送が遮断されるようなことになれば、前述の通り、原油価格は急騰して1バレル100米ドルを超える展開となる可能性もあり得ます。キャピタル・エコノミクスによると、影響を受けるとされる諸国は、OPECプラスが保有する日糧550百万バレルの余剰生産能力の約95%を占めており、そのため、OPECプラスは、余剰生産能力を活用して原油価格の上昇圧力を抑える能力が大きく制限される可能性があります。
これらの展開がコーヘン&スティアーズのポートフォリオのポジショニングに与える影響
当然ながら、最も直接的な影響を受けるのは、商品先物やエネルギー関連株に直接的にエクスポージャーを有するポートフォリオです。この対象として、リアル・アセット、天然資源株、エネルギー戦略に加えて、度合いは小さいものの、グローバル上場インフラ株戦略等が挙げられます。特に注目すべきことは、原油先物とエネルギー株が攻撃の前に既に上昇し、6月の上昇率はそれぞれ20%および10%を上回っていたことです。
世界および米国の株式市場の6月20日(金曜日)までの上昇率が約1%にとどまっていたことを踏まえると、こうしたアウトパフォーマンスの度合いは、市場が事前に動き、エネルギー市場で地政学的リスクプレミアムが既に織り込まれていたことを強く示唆していると当社は考えています。今後については、紛争が激化し、中東の供給に明確な影響を生じた場合、価格が大幅に高騰する可能性があると考えています。これは当社の基本シナリオではありません。
当社は、今後の取引や具体的な保有銘柄についてはコメントできませんが、動きのあった6月20日時点でのエネルギー関連ポジションの状況は以下の通りです。
- リアル・アセット・マルチ戦略:当社は、トップダウンでコモディティをアンダーウェイトとし、天然資源株をオーバーウェイトとしていました。リアル・アセット・マルチ戦略においては、天然資源株に対するエクスポージャーのうち、エネルギーをアンダーウェイトとしていました。当社は、商品先物では概して、期近物をアンダーウェイトとしていました。
- 天然資源株戦略:当社はエネルギー・セクターに対してニュートラルなポジションを取っており、石油関連銘柄よりも天然ガス関連銘柄に若干ウェイトを傾斜していました。
- フューチャー・オブ・エナジー戦略:当社は代替エネルギーよりも伝統的なエネルギー関連銘柄を選好してきましたが、6月16日の週にベンチマークのリバランスが行われ、当社の相対的なポジションはニュートラルな水準(伝統的なエネルギー70%、代替エネルギー30%)に調整されました。
- グローバル上場インフラ株戦略とFTSEコア・インフラ 50/50指数:当社は北米ミッドストリーム株についてはニュートラルなポジションを取っており、カナダおよび天然ガス関連銘柄をオーバーウェイトとし、米国および石油関連銘柄をアンダーウェイトとしていました。
今回の紛争が米国と世界の経済成長に及ぼす影響
経済的な観点から見ると、今後の主なリスクは、中東での供給混乱に起因する「スタグフレーション」の影響で、エネルギー価格が高止まりする局面が長引くことです。ホルムズ海峡の封鎖が続いた場合、世界の経済成長が押し下げられる一方、インフレ率の大幅な上昇を助長する可能性があります。
そうした状況下、リスク資産の大半に影響を及ぼしうる市場の低迷がより広範に広がっても不思議でないと思われます。ただし、歴史が示すように、地政学的事象がもたらす市場への影響は通常、一時的である傾向があります。
また、エネルギー価格の高騰が長期化した場合、米連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレを抑制すべく、利下げに抵抗する姿勢をますます強める可能性もあります。
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